短編

□夏の暑さ
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家に着くと山本のお父さんがお迎えをしてくれた。
少しだけ挨拶をして、直ぐ山本の部屋に案内された。

「なんだかんだ山本の部屋って初めて来たような…」

「だな!散らかってて悪ぃ。」

「全然だよ!やっぱり野球関係が多いね〜」

部屋の中は野球選手のポスターや賞状、トロフィーなど沢山並べてあった。
その中には写真があり、幼さが残る山本が写っていた。

「わぁ、山本が小さい!でもやっぱり面影あるね!」

「そっか?」

「うん!でも小さくてもやっぱカッコイイな。小さい頃からモテてたの?」

「ん〜バレンタインとかはチョコ貰ったりしてたけど、そんなモテてねぇよ。」

チョコ一個でも貰えるだけで、羨ましいんですけど。

なんて心の中で俺は呟いていた。

「あ、茶取ってくる。座って待っててな!」

「ありがとう!」

山本がお茶を取りに行ってくれている間に、俺は部屋の写真を眺めていた。

ふと机に目をやると、伏せている写真立てが視界に入った。

「…勝手に見ちゃまずいよな?」

もしかしたら彼女との写真かもしれない。
見せたくないから伏せているのだと分かっていても、気になって、見てしまった。

「え?」

「お待たせ。」

「あ、わぁ!!あ、ありがとうっ」

「…」

山本は無言でテーブルにお茶を置くと、俺の方へ歩み寄って来た。

「…っ」

「ツナ、気持ち悪いって思った?」

「そうじゃなくて…あの、なっんで俺の写真…?」

そう。テーブルに置いてあった写真は俺の写真だった。

しかも皆一緒ではなく、俺単体で、目線は違うから多分隠し撮りだと思う。

「…言わないと決めてたけど、もう言うしかねぇよな。」

「え?」

山本は俺の両肩を大きな両手で掴むと、膝を曲げて俺の目線と同じ高さに屈んだ。

いつもより真剣な面持ちで、更に顔が近いのもあって、俺は緊張した。

「ツナ。真面目に聞いてくれ。」

「う、ん」

「俺はツナの事が好きなんだ。友達としてじゃない、恋愛感情として。」

「!」

真っ直ぐに見つめられ、いつものような冗談じゃない事は、ダメツナな俺でも理解出来た。

俺の心臓がドクリと音を立てて動いた。

でもなんだか山本は苦しそうで、辛い表情をしていた。

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