短編
□夏の暑さ
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「ははっ、やっぱ聞かなかったことにしてくんね?」
「…」
「俺やっぱツナとずっと友達で居たいし、失いたくないからさ…っ」
山本の言葉は最後震えているように聞こえた。
背中しか見えないから、どんな表情をしているか分からないけど、泣いているような気がした。
「や、山本!」
俺は背後から抱きついた。
身長差があるから、しがみ付いたの表現の方が正しいかもしれない。
「俺、嫌じゃなかった。」
「…え?」
「山本に好きって言われて嫌じゃなかったよ。心臓もさっきから五月蝿いし…。これが恋愛感情かって聞かれたら、正直分からないけど…でも、山本の事は、好き…だと思うよっ」
山本に辛い顔させたくなくて、すっごい早口で言ったけど、やっぱり最後のは恥ずかしかった。
嫌じゃなかったのは確か。
心臓も五月蝿いのもウソではない。
好きって感情も…決して同情なんかじゃなかった。
「…う、そ」
「嘘じゃないよ。だから、そのっ、そんな顔しないで。」
此方を見た山本の目にはやっぱり涙が溜まっていて、今にも落ちてきそうだった。
「おっわぁ!?」
俺は山本に飛びつかれながらハグをされた。
その衝撃で俺はよろめき、山本と一緒にベットへ倒れ込んだ。
「わっ悪ぃ、ツナ!怪我なかったか?」
「うん、大丈夫だよ。」
「…」
「…」
二人の間に沈黙が流れた。
今ベットの上で、俺が山本に押し倒されている状態だ。
「ツナ」
「はっはい!」
「キス、してもいいか?」
「へっ!?えっと、そのあのっ」
山本の言葉に顔が一気に熱を持ったのが自分でも分かった。
うろたえている自分が恥ずかしくて、俺は両手で顔を隠した。
「…やっぱ嫌?」
「そ、そうじゃなくて…。えと…恥ずかしいっ」
「ツナホント可愛すぎなのな!」
またガバリと抱きついてきた山本の背中にそっと腕を回した。
添えるだけだった腕も、いつの間にか互いにギュっと抱きしめあっていた。
「まだキスは早ぇか!」
「う、ん」
ただ抱き合っているだけでも、よかった。
夏は暑くて、クーラーなんて無いと死んでしまうくらいだけど、今の俺達はクーラーなしの部屋よりも暑いんじゃないかな?
でも、それでも良かった。
お互い抱き合って初めて分かる心臓の速さ。
俺もそうとう早いけど、それよりも山本のほうが早いのは、なんだか嬉しかった。
END
あとがき⇒
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