短編

□君へ〜桜ロック〜U
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「骸、お前に頼みたい事があるんだ。」

「なんですか?」

いきなり彼に執務室まで呼び出しをされた。
滅多にアジトに居ない僕に、今日必ず来るようにと、クロームから伝言を受けてやってきた。
任務だろうか。はたまた潜入捜査だろうか。
仕事の事には間違いはないだろうと、そんなことばかり考えていた。

「うん…骸にしか頼めないことなんだ。」

「君にしては珍しい。恋人の彼でも、忠犬の彼でもなく、この僕に、ですか?」

「そう。」

執務室にあるボス専用のイスから立ち上がると、僕が腰掛けてある、黒革のソファーの向かいに腰掛けた。
彼の目はいつもみたいにふわりとしたモノではなく、戦っている時のような、あの鋭い目だった。

これからの話しがとても重要な話だということが察し出来た。

「俺はボンゴレ十代目のボス。いつも命を狙われている、いつも守護者の君達に守ってもらってる。」

「えぇ、まあ僕はあまりお役に立ててないと思いますが。」

「そんな事ないよ。骸は頼れる奴だから、いつも辛い任務ばかり押し付けてしまってるんだ。ごめんね。」

真剣だった目は一瞬、いつもの彼のような優しい目に変わった。
謝る時の表情は本当に申し訳ないと、眉を下げて言っていた。

「構いませんよ。僕もその方が楽だ。…で?」

「あぁ、ごめん!逸れちゃったね。えっと、それでね。」

彼は話をしながら立ち上がった。
備え付けてあるキッチンへ向かいお茶の準備をしていた。

「守ってもらっているのに、こんな口聞いちゃ生意気なんだけど…」

コポコポ…
カップに紅茶を注ぐ音が響く。

「それだけじゃ駄目なんだ。」

カシャン
今度は机と紅茶が入ったカップが擦れる音が響く。

「と、言いますと?」

「駄目なんだよ、骸。それだけじゃ。」

目の前に置かれた紅茶はふわりと甘い香りを漂わすのに、彼が放つ空気と鋭い目が、少しピリピリとした雰囲気を醸し出す。

僕はゴクリと喉を鳴らした。
ここまでの雰囲気を出す彼は初めての経験だった。
口を閉じて、ただ彼が次の言葉を発するのを待った。

「…飛躍、しすぎたね。」

ポトンポトンと角砂糖を入れると、スプーンでそれを混ぜ、紅茶を一口含んだ。
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