短編

□two-way traffic
1ページ/4ページ


彼と付き合って、初めて感じたこの思い。
最初はこの感情はなんだか分からなくて、彼にちょっかいばかり出していた。
そして、ふとした瞬間に気付いたんだ。

好きだ、って。

彼は目に涙を溜めて俯いた。
ああやっぱり駄目だった、気持ちを伝えるんじゃなかったと後悔していたら、彼は俯いていた顔を上げ真っ赤な顔で、俺も好きですと、小さく呟いた。
その後はよく覚えていないけど、僕は嬉しすぎて彼を抱きしめた。
トクントクン…と聞こえる心音は二人とも同じ速さで、思わず笑ってしまった。

なんだかんだで、僕達の付き合いは続いている訳で。
手も繋いだしキスもした。もちろんその先だって。
でも、いつも僕から誘っていつも彼はただ受け止めるだけで…本当に僕の事が好きなのか分からなくなった。
恥ずかしいからか、愛の言葉もない(もちろん僕からも言わない)
優しい彼だから同情で付き合ってくれているのではないだろうか?
毎日毎日不安で堪らない。

「…ヒバリさん、聞いてます?」

「…え?」

「もうっ、だから明日は応接室じゃなくて、放課後俺の教室に来てくれませんか?」

とうとう、別れを切り出されるのではないだろうか。
心臓がドクドクと速くなる。
不安な表情をしている僕に、彼はキョトンと首を傾げたが、気にしない素振りでふわりと笑った。

「ヒバリさんに見せたいものがあるんです!」

こうやって彼が笑うだけで、不安は一気に解消される。
だが一体教室で見せたい物とはなんなのだろうか?
持って来れないの?と聞くと、教室じゃないと駄目なんです、と返って来た。

「分かった。」

不思議に思いながらも、一つ返事をすると、彼はまたふわりと笑った。


◆◇◆◇◆◇


HR終了のチャイムが鳴って、暫くして僕は応接室の椅子から腰を上げた。
すぐに行きたかったが、群れがわんさか居る時には行きたくなくて、少し時間を空けたのだ。

ガラリ

彼がいる教室の扉を開けると、夕日が僕の大きく照らした。
眩しさで目を細めながら、意中の人物を探すと、真ん中の窓側に重力に逆らったつんつんで茶色い髪を見つけた。
腕を枕に机の上ですぅすぅと寝息を立てて寝ている。
表情はこちらを向けたままだ。

.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ