短編

□two-way traffic
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コツンコツンと近づき、彼の表情がよく見える隣の席へと腰を下ろした。
よだれを垂らして寝ている姿は本当に可愛くて、僕が今座っているこの席の奴は彼の寝顔を見たのかと思うだけで、イライラする。

(あとでこの席の奴を咬み殺そう。)

静かに腕を伸ばして髪を撫でてやると、ふにゃりと気持ち良さそうに笑った。
何度か髪を梳いてやると、まるで猫のようにその手にスリスリと頬を寄せてくる。

「ねぇ…君本当、可愛すぎ。」

誰が開けたのか、また誰が閉め忘れたか分からないが、窓が開いていて、そこから冷たい秋風が二人の体を掠めた。
彼はぶるりと震え、ううんと唸るとゆっくりと目を開けた。

「おはよ、綱吉。」

「…う、うわあああっ!!」

これでもかと大きく目を見開き、器用に後へ大きくと倒れた。
そして器用に頭と腕と後それから…とにかく色んな場所をぶつけながら床へと体を預けていた。
半ば呆れながら手を伸ばすと、痛そうに体を起き上がらせ、僕の手を握った。

「うう…っ痛い、です。」

「ドジな君が悪い。」

「それより、どうしてヒバリさんが此処に?」

「どうしてって、君が呼んだんじゃない。」

彼は周りをキョロキョロして、最後に時計を見、あっと一つ声を上げた。
そして申し訳なさそうにこめかみを掻いて、僕を見た。

「…何時間目に寝たの。」

「ご、五時間目…です。」

「うん、後で補習。」

顔を真っ青にする彼に、冗談だよと言葉を並べてやった。
安心したのか一つため息をついた彼は、その後にふふっと微笑んだ。

「何。」

「いや…これほどまでに机と椅子が似合わない人って居な…」

「咬み殺されたい?」

「嘘ですすみませんごめんなさい。」

確かに今初めてこの机と椅子に座ったかもしれない。

いつも応接室の高級な椅子で、ふかふかだから、この椅子は固くて痛い。
よくこんな椅子に座ってられるな、と感心さえもした。

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