短編
□お洒落より
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僕らは決まって応接室。
週末は僕の家に泊まって一夜を過ごす。
そのローテーションは凄く幸せで、毎日彼を見てても飽きない。
でも確か、最近聞いた曲でこんな歌詞があった。
『慣れ合いを求める俺、新鮮さ求めるお前。』
僕はこれで十分満足だが、彼は新鮮なことをしたいかもしれない。
そして頭の中でふと出てきた単語。
それは’デート’
付き合ってから大分経つが、外でデートなどしたことがなかった。
第一どうしてあんなに群れている場所へわざわざ行かなければならないのか。
無理だ、と思ったが、目の前で紅茶を美味しそうに啜る彼の笑った顔が浮かんだ。
「綱吉、今度の週末だけど。」
「はい、えっとまた学校帰りにそのままで大丈夫ですか?」
「じゃなくて、…デート、しよう。」
「…えぇ!?」
大きく驚いた彼は思わず飲んでいた紅茶を零しそうになったが、なんとか保って、おそるおそる僕の瞳を見つめた。
「デ、…トですか?」
「うん。嫌?」
目の前の彼は顔を真っ赤にしながら、首を横へ振った。
その反動で手に持っていたカップから紅茶が零れ、彼の服を濡らした。
「うわ、わわ!」
そんな行動も可愛いな、なんて思いながら紅茶で濡れた部分をタオルで拭き取ってやる。
拭き終わったタオルを持って行こうと立ち上がると、彼は僕の手をそっと握った。
相変わらず小さくて白い手に目が釘づけになる。
「どうしたの?」
「あの…俺、嬉しいです…!楽しみにしてます!」
そして彼は笑った。
その瞬間に僕は、ああやっぱり誘ってよかったと、笑顔だけで解されるのだ。
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