短編

□甘え=甘え
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今日は恋人たちのイベント、クリスマス。
クリスマスイブは何故かボンゴレの親睦会があり、結局恋人の彼に会うことも無く一日が終わってしまったのだ。
もちろん群れることを嫌う彼が親睦会に参加することも無くて。
終わったのも夜中で、会いたかったが流石に寝ているだろうと思い、彼の部屋にも行くことが出来なかった。

付き合って何年も経つ。
なんだかんだ言いながらもクリスマスや誕生日も共に過ごしてきた。
例年ならクリスマスの数日前に約束を彼の方から取りつけにやってきて、当日が楽しみで仕方がないというのに、今年はどうだろう。
約束どころかここ最近姿を見ていない。
年末に近いこの時期は毎年任務も無くて守護者を含めたボンゴレ全員が休暇なのにも関わらず。

「会いたい…な。」

彼の傍にいる草壁さんはよく見かける。
何故か俺の顔を見ると目を反らして逃げるように去って行くのだが。
それでも恋人の恭弥さんに会うことはない。
どうしたのだろう。
自分が何かしただろうか?
でも最後に会った時はいつものように甘い時間を過ごしていたというのに。

思わず漏れた独り言も誰も居ない執務室では、静かに響くだけで。
この声が彼に届けばいいのに、なんて思ってしまう。


コンコン


とても丁寧なノック音。
最近ではその音で誰が来たのか分かるようになった。

「獄寺君?入っていいよ。」

「失礼します。」

入ってきたのは案の定獄寺君だった。
ドアをゆっくり開け、綺麗に45度お辞儀をして閉めた。
今も昔も変わらないけど、昔よりは性格がトゲトゲしなくなった彼。
相変わらず十代目十代目、と言うのには変わりはないが。

「どうしたの?何かあった?」

「いえ、今日のご予定は…何かありますか?」

「何も、ないよ。」

少し、涙が出そうになった。
予定がないのは確かで、誘われもしていない彼を待っているだなんて。
とてもじゃないけど獄寺君に言えるわけがなかった。
そんな自分が虚しくて、胸が少し締め付けられた。

「では、山本と一緒に久しぶりに飲みに行きませんか?」

些細な事でも気がつく彼は、俺の表情の変化を見逃さなかったんだと思う。
目を合わせれば、満面の笑みがそこにあったから。

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