短編

□確かなもの。
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俺の恋人はとにかくモテる。
中学生離れした大人っぽい顔に優しい笑顔、そして痺れるような美声。
街へ出れば大概の女性が振り向くのだ。

(本当に…俺なんかでいいのだろうか。)

背も低いし鼻も低い。
ほっぺただってぷにぷにで子供子供した顔立ち。
同い年なのに一緒に並ぶと兄と弟のような差が生まれる。

告白をしてきたのは骸の方で、片思いだと思っていた俺はただただ驚いた。
やっぱり無理ですよね、と悲しい顔をして去って行こうとする骸の背中に思わず抱きついた記憶は今でも新しい。

「…で、何ですか!惚気を聞かせる為にハルを呼んだんですか!」

声のする方へ顔を上げると、頬を膨らませたハルの姿が。
そういえば相談する為に呼んだのだった。

「ごめんごめん、ハル。実は相談があって。」

ハルは俺が骸と付き合っているのがどうしてかバレてしまっていて。
本当なんですか、と問い詰められた時心臓が止まるかと思った。
気持ち悪いなんて言われたらどうしようかと思ったが、上手い嘘も思い浮かばず正直に話したのだ。
そうするとハルは驚く所か目をキラキラと輝かせて、応援します!と激しい握手を交わした。
一体あれは何だったのだろうか。

「はひっ相談ですか?」

「うん、実は…」

俺は最近の悩みを全て話した。
本当に骸の恋人が俺でいいのいだろうか、相応しくないのではないのだろうか、等。
真剣な顔で相槌を打っていたハルは、何故か相談を進めて行く内にだんだんと目をキラキラ輝かせていた。
どうして人が悩みを相談しているのに、そんなに嬉しそうなのかと問うと、ハルは一言。

「では試してみましょう!」

「……は?」

人の話、聞いてたのだろうか。
本当はハルにただ一言、大丈夫ですよと言ってもらいたかっただけなのに。
その一言だけで安心出来たというのに。
人の心の叫びなど聞かぬハルは俺の机の引き出しから紙とペンを取り出し、何やらカツカツと書き始めた。
覗き込んでみると、俺は言葉を失った。

「なっ…な、」

「ツナさん、次のデートはいつですか?」

「へ?…っと明日だけど。」

ノートへ向けていたハルの目がばっ、と此方を見、最高の笑顔でまた一言。

「ではその日に実行しますよ!」

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