短編
□確かなもの。
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俺は今待ち合わせである駅の改札口…がよく見えるカフェにハルと居る。
ハルは黒いグラサンに黒いスーツ(もどき)を着ている為、フェミニンなこの場所では凄く浮いている。
昨日のあれから、俺はその実行すると言った計画を全力で拒否をした。
だけれどハルの押しは大変強く、最後にお願いしますと言われれば、どうすることも出来なかった。
部屋の外で(どこからか分からないが)話しを聞いていたフゥ太が、僕のランキングは外れないね、と嬉しそうにしていた笑顔は忘れられない。
「それでは作戦開始しますよ。」
「それより服!目立つから。めちゃめちゃ見られてるから!」
聞く耳を持たない(元々持ち合わせていない)ハルは双眼鏡を持って改札口を見つめている。
双眼鏡なんかで見なくても、裸眼で見えるのに。
俺が呆れていると丁度待ち合わせの時間になり、時間ピッタリに骸が改札口へやってきた。
「では、@待ち合わせ時間に遅れても怒らないか、ですっ!」
「やだよ、俺骸待たせるの。行くからな。」
立ち上がった瞬間、ハルが大きな声で行かないでください、なんて叫ぶもんだから、カフェにいた客全員がこちらを見てきた。
まるでドラマの別れの1シーンのようだが、ハルが黒いグラサンに黒いスーツ(もどき)の格好をしているから、そうは見えないであろう。
恥ずかしさのあまり、俺は思わず座ってしまった。
「…言っておくけど、俺待ち合わせで遅刻経験あるよ。骸は全然怒ってなかったし…」
「その時は何分くらい遅れたんですか?」
「んーっと…十分くらいかな。」
「では今日は三十分遅刻しましょう。」
そんなの無理だよ、無理!
叫んで立ち上がろうとしたが、先ほどと同じように大きな声でハルが叫ぼうとしたから、再びストンと席に着いた。
流石の骸だって三十分連絡なしに遅刻したら、怒るであろう。
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