短編

□登り、下り
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リボーンよりスパルタな彼を知っているから、反論しようとした口を止めた。
机の横で仁王立ちで腕を組み、腕に乗せた人差し指は忙しなく動いている。
足元にあるつま先もカツカツと音を鳴らしながら止まる様子がない。

(ひえええーっ)

つま先の音と人差し指の動く音が丁度交互に聞こえるものだから、ただでさえカツカツと急かされているのに、さらに音は加速している。
綱吉はサボりまくって溜まった報告書を死ぬ気で目を通す。
机の上に山のようにある書類を一枚、また一枚と減らしていく。


◆◇◆◇◆◇


そして一時間ぴったり経った頃、丁度最後の一枚に目を通しサインを終えた。
その間雲雀はずっと綱吉の横に立ち、急かしていたものだから凄いと綱吉は思った。

終えた綱吉は大きく伸びをして達成感に浸っていると、雲雀は伸びをしている手を取り、綱吉を引きずった。
それはもう、ズルズルと。

「いっ痛いです!服、破れるっ、高いのに!」

「うるさい。」

歩きますと言っても彼の耳には届いていないようで、どこまで続くか分からない廊下をズルズルと綱吉は引きずられていく。
勿論階段も遠慮はなしだ。
ガツガツと角が肩や腰に当たるが、大して気にしない様子。
でも彼なりの優しさなのだろうか、スピードは階段の時だけ凄くゆっくりだった。

ポーン。
そんな効果音が聞こえるような感じで綱吉は放られた。
いきなり扉を開けていきなり捨てられた綱吉には受身が取れず、思わず目を強く瞑り次に来る衝撃に備えたのだが、思っていた痛さは来ずゆっくり目を開けるとそこは和室で、床は畳だった。

「う…わぁ。」

和室なんて久々で思わず歓喜の声を漏らす。
そんな綱吉の様子を見た雲雀は口元が少しだけニヤけた。

「綱吉、おいで。」

先ほどとは違うスパルタの彼ではなく、優しい恋人に出すような声で囁いた。
耳元で大好きな声を聞いたもんだから、思わず綱吉は顔を赤く染める。

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