短編

□車とキーとひばり先生
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*雲雀先生のお家4


風呂から出ると机に頭を預けすやすやと眠る生徒の姿が目に入った。
こちらに顔を向けているから、半開きの口からよだれが垂れているのがよく見える。
可愛い、そう思った。

「変なの。」

人間を愛しいだなんて可愛いだなんて思ったことがないのに、目の前の人物を素直に可愛いと思った。
分からぬまま人差し指で唇を突いてみた。
ぷくりとした唇は、青年より少年寄りの可愛いもので、触ってみて分かったが、意外に柔らかかった。
触れた人差し指を見つめながら再び先程と同じ言葉を呟いた。

とにかくここでは風邪を引いてしまうので、自分のベットへ運んだ。
よく無防備に爆睡出来るもんだと感心する。
ただの先生だからいいものの、他の奴だったら襲われそうだ。

「おやすみ」

布団と毛布に包まった彼は夢の更に深い夢へと向かったようだった。

「…あ」

そういえば自分が寝る場所がない。
誰かが泊まりにくるだなんて有り得ないこの家に、来客用の布団なんてなくて。
ソファーは一人掛け。
床は冷たい。
色々考えたが場所なんてなくて、結局彼の隣へ体を入れ込むことにした。
子供は体温が高いというのは本当らしい。
だって布団がもう暖かいから。

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