短編

□車とキーとひばり先生
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*雲雀先生のお家6

目の前には少し開いた胸板が見える。
白くて綺麗でそして男らしい胸板。
頭の下にあるのはしなやかな筋肉を付けた腕。
そして彼の寝息がふわふわの自分の髪を揺らす。

(ね、寝れない…!)

抱きしめられてからどのくらいになるだろう。
目に入るのは胸板だけだから時間は分からない。
その間ずっとドキドキと心臓が激しく動いている。

冷静になって記憶を辿れば、先生がお風呂に入っている間に眠ってしまったのだった。
だけどベットで寝た記憶はない。
ということは先生が運んでくれたのだろうか?
突然パタパタと羽音が聞こえたと思うとその物体は先生の頭に止まった。(見えないから多分だけれど)
そしていきなり鳴いたのだ。

「アサ!アサ!ヒバリ、アサ!」

少し唸った先生はゆっくりと体を起こした。
男らしい胸板も寝息も腕も一瞬にしてなくなってしまった。
だけど、優しい手が頭に伸びてきて、くしゃりと乱暴に撫でられた。

「うわっ!」

「おはよ。早く準備しないと遅刻するよ。」

「遅刻…?」

先生はそう言い残し、洗面所へと向かって行ってしまった。
遅刻と言われても今日は学校も休みだし、何も用事はないはずだけど。
ぽかんとしたままベットの上に座っていると、昨日勉強したままの机が目に止まる。

「え、あ、ああ!」

そうだ、今日が教習所に行かなくてはいけなかったんだった。
俺はベットから急いで立ち上がり準備をした。
先生は顔を洗い歯を磨いた後、朝ご飯を二人分作ってくれて、それを二人で食べた。
夫婦みたい、と思ってしまってる自分は馬鹿だと思う。
でも幸せだとも思う。

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