短編

□うそのうら
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「ドジだね。」

そう言いながら支えてくれたのは雲雀さんの腕。
細いのに筋肉がしなやかに付いていて、かっこいい男らしいと思う。
そんな腕に支えられ、また胸がドキドキと鳴る。
何で最近胸がドキドキ言うんだろう、熱でもあるのかななんて。

「じゃあね。」

帰り際に目尻を少し下げて優しく笑う。
それが雲雀さんの俺にしか見せない表情。
ほら、また胸がドキドキ言ってる。

「あ、そうだ。」

三歩進んだあと、くるりと振り返って一言。
また無表情で、嫌いだよ。なんて。
さっきのドキドキとは違う胸の高鳴りが体を支配している。
今度の胸のドキドキは痛くて苦しくて、本当に風邪でも引いたのだろうか。
そんな表情を見た雲雀さんはまたクスリと笑って、また明日ねっと言って去っていった。



「ただいまー」

すぐキッチンへ向かうと母さんが美味しそうな匂いをたてながら料理を作っていた。
母さんに一つ挨拶をして二階に向かい、荷物を置く。
宿題なんてするもんか。
そして再び一階へ降りようとしたとき、扉の前にうざさマックスのランボが仁王立ちしていた。

「ガハハ!ランボさん、今日は嘘ついちゃうもんね!」

「はぁ?なんだよランボ。」

「あれれ?ツナ知らないのー?今日は嘘ついてもいい日だもんね!」

「嘘ついてもいい日?」

壁に貼ってあるカレンダーを見ると今日は四月一日。
そこで俺は一瞬で顔が赤くなる。

「は…っ、う、そ?」

「ツナなんで赤くなってんの?ねぇなんで、なんで?」

散々嫌いと言われた時何でか凄くショックだった。
嫌いと大嫌いと雲雀さんの口から発される度、胸がじくじくと痛んだ。
でも今日はエイプリルフールで嘘をついてもいい日で、つまり嫌いと言ったのは逆という意味で。

「…いや、違うかもしれない…違うかも…」

本当に嫌いで言ったのかもしれない。
違うかもしれない、違うかもしれない。

「でも…」

どうしても期待してしまう。
どうして俺こんなに心が暖かくドキドキしてるんだろう。
まるで雲雀さんの事好きみたいじゃないか。

「好き…?」

そして更に顔が赤くなった俺は布団にダイブし、足をバタバタと動かし誤魔化した。
ランボがずっとなんで?と聞いてくるけど、ずっと無視だ。
それどころじゃない。
だって自分の気持ちに気付いてしまったんだから。


END

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