短編

□あまえたいの
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◆拍手とは別のお話。
◆少しだけ下品

ある雨が振り続ける日だった。
どんよりした天気は昔から頭痛がし、昔からふわふわな髪をくるくるにしてしまうから嫌いだ。
ついでに言うと母さんから借りた花柄の傘も恥ずかしい。
いつも使っていたビニール傘は前回使った時に風が壊していったのだ。
買おう買おうと思っていたが、雨が降っていない日に傘を買いに行くなど面倒で後回しにしていたから、突然の雨に対処が出来ず、仕方なく母さんの花柄傘を借りた。

大雨のせいで周りの音は雨がコンクリートに当る音しかしない。
道路の凹凸に合わせて水たまりを作り、そこに足を踏み入れるとぴちゃんと水達が水たまりから飛び出ていく。
そして複数の水達は綱吉の靴下も濡らしていく。
だから雨は嫌いなんだ。

「ったく…ネギくらい入れなくてもいいのに。」

今日の晩御飯は鮭の塩焼きときんぴらごぼう。
そして和食に合うご飯と味噌汁も一緒にいつも出てくるのだが、味噌汁の上にかけるネギをどうやら買い忘れたらしい。
ネギなんて無くてもいいじゃないか、と言ったが、薬味が無いだけで味は変わると煩かった。
正直母さんの料理はとても美味しい。
作るのも好きだから、昔から外食なんて滅多にしなかった。
たまには外で食べたいとは思うが、母さんの料理で全然満足だった。
だからこそネギなんて無くても構わないのに。

「こだわりあるからなぁ。」

家にネギはあったのだが、それは使用済みのネギの根っこを植えて生えてきているもので、ネギの風味はない。
味噌汁には風味があるネギがいいそう言われ、ただ今絶賛おつかい中。
近くの八百屋は閉まっていて、少し遠いスーパーまで買いに行って、そして今は帰り道だ。

相変わらず雨は続いている。
携帯やipodなど持っていないから傘を差し、進行方向を見て進むしか暇を潰せない。
一歩一歩足を進め行きと同じ道を帰っていると、目の前の電信柱の下に小さなみかんの箱を見つけた。

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