短編

□ぽかぽかとどきどき
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「俺って幸せだな。」

ぽかぽかな陽気が窓から差し込み、二人を照らしだしす。
桜も散って青葉が出始めた今頃、季節はだんだんと夏の陽気へと移って行こうとしている。
いつもだったらこんなぽかぽかな日は眠くなるものだ。
教室でもうとうと、家でもうとうと。
睡魔に逆らわずいつも夢の中へと飛び立つ綱吉だが、今日は違っていた。
背中とお尻には山本の温もりがあって、ゆらゆらと体が揺れている。
何故揺れているかってそれは山本が揺れているからだ。
何故山本が揺れているから俺も揺れているかって、それは今俺は山本の膝の上に乗せられているからだ。
背中にある山本の心臓はとくんとくんと忙しなく動いている。

「山本、どうしてここに?」

約束もしていないし、連絡もなかった。
今日は夕方から山本の家で誕生会があるから、それまで家でごろごろしていようと思っていたのに。
山本は突然訪問してきたのだ。
嫌なんかじゃない、凄く嬉しい。
一応二人は付き合ってはいる。
だけど、獄寺君にも内緒にしているし、二人は手を触れあう程度のお付き合いしかしていない。
だからこうやって膝の上に乗せられて、後ろから抱きしめられることなんて初めてなんだ。
きっと山本の心臓の早さより俺の方がきっと早い。

「みんなに祝って貰えるのは嬉しいけどさ、俺はさ…」

ぎゅっと先ほどより強く抱きしめられ、心臓がより近いものとなった。
…さっきの言葉は訂正だ。
俺よりも山本の心臓の方が激しくうるさいから。

「一番、ツナに祝ってもらいたい。」

肩に顔を埋められ、まるで小さな子供が母親に甘えているみたいに呟く。
天然でいつも周りが見れている冷静な彼。
言葉を濁したりせず、いつもストレートに物を言う。
告白の時だって好きだ、と真剣な目で言ってくれた。
だから今回の言葉も素直で真っすぐだから、その言葉が嬉しくて胸がきゅきゅって何度も締め付けられる。

「山本、お誕生日おめでとう。」

生まれてきてくれてありがとう。
これから先もずっと毎年ずっと…山本の誕生日を祝えたら嬉しいな。


END


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