短編

□equal
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恋人の誕生日なんて初めてだし、それに趣味が掴めない彼へのプレゼントなんて最初から難易度が高すぎるだろう。


綱吉は困っていた。
五月五日こどもの日、去年までは普通の祝日で家でごろごろしてただけの面白味も何もない日だったのに。

「はぁ…」

本日何回目のため息だろうか。
恋人である彼雲雀恭弥の誕生日が目前に迫っているのだ。
付き合ってまだ数ヶ月なもんで、彼の誕生日を祝うことは初めてなのである。
勿論プレゼントを用意するのも初めてだ。
いつも応接室に居て仕事をしているし、家に行ったことはあるが、和風でとても綺麗な家だった。
綺麗なのは最小限な物しか置いていないから。
だから趣味も分からない。

「雑誌見ても…なあ、」

目の前にはメンズ向けの雑誌があるのだが、載っているもの何もかも彼に結びつかない。
指輪やネックレス、財布にバッグ。
しかも雑誌の年齢層を間違ったのか、掲載されているもの全て相当なお値段だ。
雑誌をぱたりと閉じ、再びため息をついた。
閉じた雑誌の裏表紙には大きく香水の広告が貼られていて、それに大きく飛びついた。

「香水…!あ…」

そういえば彼の家に行った際、部屋には不釣り合いな香水の瓶があったことを思い出した。
発見した時は少しドキドキと胸が高鳴ったのを覚えている。
何赤くなってるの?と言われたから、顔も赤かったんだろう。
そうだ、香水にしよう!
やっと決まったと思ったのだが、彼が付けている香水がどれだか分からない。
匂いは好き好みがあるだろうし、それに俺が選んだ香水を渡すとなんだか俺色に染めているみたいで恥ずかしい。
近くにあったクッションへ顔を無駄に埋めた。

「そうだ、ディーノさん!」

彼なら家庭教師だし、イタリア人だし、何かいいアドバイスを聞けるはずだと思い、母さんに内緒で国際電話をした。
国際電話は料金が高いから、早く用件を聞いて早く切ろう。
受話器越しに電子音が聞こえ、その数秒後もしもしと聞き覚えのある声が聞こえた。

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