短編

□equal
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「ヒバリさん、誕生日何が欲しいですか?」

いつもと同じように放課後応接室に行き、彼が入れてくれた紅茶を飲みながら聞いた。
彼は紅茶を飲む手を止め、不思議そうに俺を見た後ああと呟き紅茶を再び飲み始めた。

「そういえばそんな日もあったね。」

この人自分の誕生日を忘れていたらしい。
確かに誕生日を彼から直接聞いた訳じゃなく、クラスの女の子達がきゃきゃ言いながら話していたのを聞いていた。
隠れファンがいることは知っている。
彼女達が目があったときゃきゃ言っているのを聞くと、俺はあんなことやこんなことを彼としているんだと自慢したくなる。
勿論そんなことはしないけれど。

「何か欲しいものはありますか?…あの、俺にあげれる範囲で。」

「欲しいもの…?」

何もいらない、と即答で返ってくると思っていたのに、彼は意外にもちゃんと考えてくれた。
黒革のソファーに深く腰掛け、長い脚を組み紅茶を飲みながら考える様は凄くかっこいい。
組んだ脚の上にある白くて長い指も、紅茶を通す度ごくりと動く喉も。
彼はどうして俺なんかと付き合ってくれているのかと、彼の姿を見る度に疑問に思う。
前に一度聞いたことがあった。
その時彼は俺の顔を真っ赤に染め上げる言葉を吐いたのだが、それは内緒。

「僕の顔に何か付いてる?」

「…へっ、あ!すみません!」

あの唇であの言葉を吐いたのかと思い、ずっと見つめてしまっていたみたいだ。
謝罪の言葉を述べると、まあいいけど、と彼の不器用な言葉が届く。

「決まったよ、プレゼント。」

「本当ですか!?」

「うん。ケーキ。」

紅茶を飲みながらサラリと言われた。
彼の趣味が分かる気がしてドキドキと期待をしていたのに、実際彼が欲しいものは甘い食べ物だった。
ケーキ、ケーキ、ケーキ…
ショートケーキとかチョコレートケーキとか…あのケーキだよな?
彼が甘い物を食べている所なんて想像がつかなくて、そして似合わなくて思わず笑ってしまう。

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