短編

□反則です
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次の日学校に行くのが億劫だった。
風紀週間な今、学校に行けば必ず門に雲雀さんがいる。
振った相手にどういう顔して会えばいいんだ。
っていうかあの雲雀さんを振ったなんて俺ある意味凄いな!なんて。
とぼとぼ歩いていると、目の前に黒い人がいた。

(ヒバリさん…?)

門にいるはずなのに、どうして俺の通学路にいるんだろう。
近付きにくかったが、ゆっくり進んで声をかけようとした時、彼の目の前には小さな女の子がいた。
しかも泣いている。

「ふ…っ、うぅ…ママぁー!!」

どうやら女の子は迷子らしい。
そして迷子になってしまった不安でなのか、雲雀さんが怖いからなのか、わんわんと泣きだしてしまった。
まずい、まずいぞまずいぞ。
ただでさえ弱い者は毛嫌いしているのに、こんな子供が目の前で泣いているのを見ると、きっと雲雀さんは怒ってしまう。
子供には流石に手は出さないと思うが、何をしでかすか分からない。
彼が懐に手を入れた。

「ひばっ、ひばりさんっ!」

トンファーか、トンファーが出てしまうのか!?
それだけは阻止しないと!
声を掛け、その手を止めようとしたが、寸で止めた。
だってその手にはトンファーではなく、黒のハンカチが握られていたから。

「はぐれたの?」

「っうぐっ…うんっ、ママ居なくなったの。」

相変わらずポロポロと女の子の目から涙が溢れているが、それは雲雀さんを怖がってではないようだ。
流れる涙は雲雀さんがハンカチで掬ってあげているではないか。
あの、雲雀さんが。
失礼だがもう一度言う。
あの、雲雀さんが。

「名前は?」

「っ、ナツミ。お兄ちゃんは?」

「ヒ バ リ キ ョ ウ ヤ」

そこで驚いたのは、女の子に向けて自分の名前を言う時、分かりやすいようにゆっくり自分の名前を言ってあげたのだ。
そして優しい笑みを浮かべながら。
ピシャリ、心臓に雷が落ちてきたようにビリビリと痺れ出す。
ドドド、と高鳴りと共に。
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