短編

□あなたは天然天才
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いつもの学校生活。
授業が終わり急いで足を動かしてきた場所は応接室だ。
放課後応接室に来るのはもう日常になっている。
ノックをしなくていい、と毎回言われるのでもうしなくなった。

「ひば…っ」

ドアを開け名を呼ぼうとしたが、やめた。
葉が落ちる音でも起きてしまう彼なのに、今日はドアが開く音に気付かず、すぅすぅと眠っていた。
近づき覗き込むと、幼さ残るかわいらしい寝顔。
寝顔は屋上で見ることはあっても、ここでは初めてだ。
疲れてたのかな。
起こさないように近づき、顔を眺めていた。

「ちょっとそこの青タヌキ。」

眠っているのに、実にはっきり言葉を発したのだ。
なんだ起きてたのか。
そう思って再び声をかけようと思ったが、彼の口からはすぅすぅ寝息がまだ聞こえる。
もしかして…

「寝言…?」

思わず発した声が予想よりも大きかったため、口を手で隠した。
手の向こう側では、口元のニヤニヤが止まらない。
可愛い、可愛い。
寝言を彼がまさか言うだなんて。
でも青タヌキってなんだろう?

「早くタケノコプター出しなよ。」

うん、あの猫型ロボットのことだったらしい。
そしてタケコプターを要求しているようだが、タケノコになってしまっている。

「…っくく、」

笑いを抑えるのに必死だ。
タケノコプターってどんなんだ。
タケノコが頭の上でくるくる回っているのだろうか。
それを彼が装着して並盛の街を巡回しているのを想像すると、ますます笑いを堪えるのが難しくなってきた。
さて、タケノコプターを要求されたタヌキの答えはどうだったのだろうか。

「じゃあトコロテンドア出しなよ。」

もう我慢なんて出来なかった。
爆笑ものである。
多分どこでもドアを言いたかったのであろうが、どう間違って覚えたのか、トコロテンになってしまったらしい。

「あははっ…ひーっ」

腹が捻れる。
そんな間違いをする彼が可愛くて可愛くて仕方がない。
さて、トコロテンドアを要求されたタヌキはどう出るか。

「君ね…無い無い言ってると、咬み殺すよ。」

やっぱり無かったらしい。
そりゃそうだ!
お決まりの台詞が出てきたので、タヌキが可哀相と思い、彼の肩を揺らして起こした。
ゆっくり目を開け、何度か瞬きをした後、やっと焦点が合ったのか、俺の方を見る。
そして口を開いた。

「タケノコとトコロテンが食べたい。」

俺、確実に今日腹筋が割れたと思う。


END


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