パラブルストーリー
□深紅の花咲く光の丘で
1ページ/8ページ
紅い景色の真ん中で、死んだように仰向けに身体を投げ出す。
視界いっぱいに広がる青い空が腹立たしいほど綺麗で、嫌になって目を綴じる。
もう動く気力がない。動くつもりもない。この眼がもう二度と開かなければいい ――。
本気でそう思った。声が聴こえる、その時までは。
「こんな所で、何しているの?」
あどけなさの残る、少女の声。控えめで戸惑いがちで、けれど心の底まで響いてくる、まっすぐな声。
「ここでくたばれたら良いなと思って」
答えた自分の声は枯れきっていて、彼女とはまるで正反対だ。本当にくたばりそうで笑えてくる。
「死にたいの?」
「生きたくないだけ」
一瞬の沈黙。
「死んだら悲しむひとがいるよ」
「あんたにはね。……俺には居ない」
この少女はきっと純真無垢で、世界の汚い所なんてひとつも知らないんだろう。
卑屈になっていたせいで、言わなくてもいいことを付け足した。
「俺が死んで、喜ぶやつならひとりいる」
なんの腹いせか、こんな少女を困らせてしまう。心の中で、本当にくたばっちまえと自分を罵倒した。
そんな自己嫌悪の最中に。
なあ、アルト。お前のあの時の言葉は、たぶん一生忘れられない ――。
―― Heath's side