パラブルストーリー


□深紅の花咲く光の丘で
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 紅い景色の真ん中で、死んだように仰向けに身体を投げ出す。
 視界いっぱいに広がる青い空が腹立たしいほど綺麗で、嫌になって目を綴じる。
 もう動く気力がない。動くつもりもない。この眼がもう二度と開かなければいい ――。
 本気でそう思った。声が聴こえる、その時までは。

「こんな所で、何しているの?」

 あどけなさの残る、少女の声。控えめで戸惑いがちで、けれど心の底まで響いてくる、まっすぐな声。

「ここでくたばれたら良いなと思って」

 答えた自分の声は枯れきっていて、彼女とはまるで正反対だ。本当にくたばりそうで笑えてくる。

「死にたいの?」
「生きたくないだけ」

 一瞬の沈黙。

「死んだら悲しむひとがいるよ」
「あんたにはね。……俺には居ない」

 この少女はきっと純真無垢で、世界の汚い所なんてひとつも知らないんだろう。

 卑屈になっていたせいで、言わなくてもいいことを付け足した。

「俺が死んで、喜ぶやつならひとりいる」

 なんの腹いせか、こんな少女を困らせてしまう。心の中で、本当にくたばっちまえと自分を罵倒した。

 そんな自己嫌悪の最中に。

 なあ、アルト。お前のあの時の言葉は、たぶん一生忘れられない ――。

―― Heath's side 


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