パラブルストーリー


□灰色の悪魔
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 退屈だ。非常に退屈だ。世間のヤツらが言う「正しさ」なんてモノは、キレイゴトを並べ立てた死ぬほど退屈な理論だ。
 ヤツらの「正しさ」を、理不尽に奪ってやりたい。ただそれだけ。
 ほら見ろ。お前らの見てた世界なんて、ひとひねりで潰せるんだ。そうやって嘲笑いたいだけ。他にたいした理由なんてない。
 だから、壊し、殺し、でもひとりだけ残して絶望をプレゼントしてやるんだ。
 そう、例えば、もう思い出せないくらい昔に、ひとりの男の全てを奪った時のように。

「さぁて、次のターゲットは……」

 久しぶりに人間の女の子なんか連れて歩いている、あの鼻持ちならない男にしようか。








「下がってな」

 雲の上に右手をそっと触れて、ヒースは言った。アルティリカが素直に数歩下がったのを確認してから、すっと目を閉じる。
 一瞬、ふわりと彼の周りを風が包み、すぐに彼の右手を中心に、雲の上に呪文式が刻まれてゆく。無言詠唱の、空間転移魔法。恐ろしく高度な技術だ。アルティリカは目を見張った。
 薄紫の呪文式が、綺麗なヘキサグラムを描く。それを囲むように伸びる線が、繋がって円になろうとした、その時。

「――ッ!」

 何かを察知したヒースは、瞬時に魔法の起動をキャンセルして後ろに飛び退いた。
 次の、瞬間。


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