パラブルストーリー


□「オトリ」
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 ヒースを探しに来たのだと告げると、シエルは暗い顔をした。

「ヒース、あれから行方不明なんだ」
「えっ……?」
「全然、なんの音沙汰もなくてさ……」
「そう、なんだ」

 アルトは俯いて、大丈夫かな、と小さく呟いて、それからは黙り込んでしまった。シエルも暗い顔のまま、気を落とすアルトを心配気に見つめる。
 そんなふたりの様子を他人事のように眺めていたサクは、独り言のように言った。

「そうか、てめェあいつの連れか」

 黙ったままのアルトの代わりに、シエルが頷いて肯定する。サクはふぅん、と呟いてから、不思議そうな顔をする。

「心配なら探しに行きゃ良いだろーが」
「え……?」
「なにもそんなにしょげ返るこたァあるめぇよ」

 聞き覚えのある台詞だった。そういえば、ローランド先生も同じような事を言っていたっけ。

「うん」

 サクの言葉に勇気をもらって、探しに行くとアルトが言い出そうとした時、シエルの心配そうな声が耳に飛び込んできた。

「ちょっと待て。探すのはいいけどアルトひとりじゃ危ないよ」
「此処までひとりで来れりゃあ上出来じゃねェか」
「そうじゃなくて、……あ、そっか」
「あ?」
「サクが一緒に行ってくれるなら問題ないよね」
「問題大アリだ阿呆。なんで俺がこんなガキと」
「いい?アルトはね、ヒースと一緒にいたところをロキに襲われたんだよ。奴は多分、ヒースからアルトを奪いたかったんじゃないかな。だからヒースの所にアルトを連れて行けば――」
「またこいつを襲いに奴が現れる、ってか?」
「ま、推測だけどね。それならサクにもプラスでしょ。仇をとるチャンスをつくれるかもしれない」
「確証ねェだろが」
「アテもなくほっつき歩くより確率高いと思うよ」
「…………」

 勝手に進んでいく話についていけず、アルトはふたりの顔を忙しく見比べながら首を傾げた。頭の上にはてなマークが沢山浮かんでいた。


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