半熟×検索


□風都王国物語(連載中)
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★エピック1・サエコ姫



一番人気は淑やかな長女の【サエコ姫】です。

爽やか尻王子、中年闇医者王子、鉄面皮王子など様々な王子様が訪ねてきました。

サエコ姫は、成績優秀で姫にゾッコンだった"爽やか尻王子"こと【キリヒコ王子】と結婚しました。


ですが結婚してからと言うもの、失敗続きのキリヒコ王子にサエコ姫は飽き飽きしてきてしまいました。


そこでサエコ姫は考えました。

『手を汚さずに消せる方法は無いかしら……』
と、そんなサエコ姫の耳に、メイド達のこんな噂話が入ってきたのです。



『ねぇあなた知ってる?例の植物……』

『あぁ、あの世界一美しいっていう幻の花の事ですよね?』

『そうそう…。花は透き通るように白くて、日の光を虹色に反射するらしいの。見てみたいわぁ……』

『そうですね……でもその花って、とても危険なところにあるんでしょう?』

『えぇ。手に入れようとした者はことごとく命を落としてしまうそうよ……』

『綺麗なモノには棘があるって言いますからね…』



「――花…、ね…」




サエコ姫は翌日、さっそく行動に移しました。


「ねぇ、アナタ。お願いがあるのだけれど…」

サエコ姫は少し目を伏せて、ゆくりとした調子でいいます。


「! あぁ、サエコ!私にできることなら、何でも言ってくれ!」

最近の二人の会話は朝や夜のあいさつ程度でしたから、久しぶりにサエコ姫からのお願いということもあって、キリヒコ王子は大喜びです。

(私を頼ってくれると言うことは、まだ私にチャンスをくれると言うことなんだね、サエコ。あぁ、なんて君は優しい女性なんだ…っ)

恋は盲目。
まさにキリヒコ王子のためにあるような言葉です。



キリヒコ王子は無茶とも言えるサエコ姫のお願いを当然のように引き受けました。

「待っていてくれ、サエコ。必ず君の期待に添える結果を持って帰ってくるよ!」

「えぇ…アナタ……楽しみにしているわ…」


意気揚々と旅立つキリヒコ王子の背中に、サエコ姫は感情のない、まるで氷のような視線を向けて送り出しました。


「―――サヨナラ……アナタ。」

そう言って微笑を浮かべたサエコ姫の中にはもう、キリヒコ王子への気持ちなんてヒトカケラもありません。



「……姫様、こんな所にいらしたのですか。」

「あら、どうかしたの?」

「健診の時間です。イサカ先生も、もういらっしゃっています。」


「まぁ!イサカ先生がっ!?」

先ほどまでの冷めたお顔はどこかへ飛んで行ってしまったように、サエコ姫は途端に笑顔になりました。

「それならば、早くいかないと…。ああ、どうしましょう、こんなドレスではイサカ先生には会えないわ。新しいものを用意してちょうだい。」

「かしこまりました。」



今やサエコ姫は、"中年闇医者王子"ことミステリアスな【イサカ王子】に夢中です。

「……イサカ先生…。貴方はなんて魅了的な人なんでしょう…。貴方みたいな人、今までに出会ったことがないわ……」

サエコ姫は、ホゥ と溜息をつきながらそんなことを言います。
キリヒコ王子という夫がいたことなんて、忘れてしまったみたいに、そんなことを言います。


―PS
キリヒコ王子がどうなったかは、誰も知りません。



エピック1・サエコ姫 end
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