半熟×検索
□明日の夢
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「ぅ"、わ…ッ、ぁ"、あぁああっ!!」
「―ろ、……ょた郎、翔太郎!」
「っ…ぁ。あ……、…フィリ…ップ……」
「大丈夫、かい?大分うなされていた様だったけれど…」
悪い夢でも見たのかい?と心配そうな顔した相棒に見下ろされるのはコレで何回目だろう。
「大丈夫。なんでもねぇよ……。ちょっと寝苦しかっただけだ。」
心配してくれる相棒の頬を撫でるとその上に重ねられた一回り小さな手は震えていた。
あのときから何度もみてしまう、夢。
俺が何回「大丈夫」だなんて嘘ついたって、こいつにはお見通しなんだろう。
きっとこの夢は俺の後悔で出来ている。
あの夜が、ビギンズナイトが、俺が……―
あの夜が来なければ。
あんな所行かなければ。
俺がヘマしなければ。
そうすれば、おやっさんも…、
亜樹子も、フィリップだって、傷つかずにすんだんじゃないか。
「違うよ。」
そんな時、決まってこいつは首を横に振る。
俺は何も言って無いのに、涙を堪えるような表情で「翔太郎は悪くない」って、「君のせいじゃ無いんだ」って言ってくれる。
「翔太郎には…なんの罪も無い…。あるとしたら僕だ…」
「…フィリップ…?」
「僕が…悪魔だから…、みんなが傷ついた……。それから……悪魔だから、こんなに苦しんでいる君から……その苦痛を取り去ることも出来ない……」
「ごめんね…翔太郎……」
そう口にしたフィリップから、一筋の涙が流れた。
「なに言ってんだよ……」
悪魔、だなんて…
お前は自分が俺にとってどれだけの存在が分かってねぇのか?
…それだけ…、俺はお前に心配かけてたって事か…
俺は腕の中にフィリップを閉じ込めた。
「俺は、お前がいてくれたから…今日まで生きてこられたんだ……。最初は悪魔との契約だったかも知れねぇけど……今となっちゃ、言うなればお前は天使だよ。俺にとって、一番、大切なんだよ、お前が。」
「…翔、太郎……僕は…、」
「だからな、フィリップ、お前は……、…」
あぁ。そっか…。
あの夜があったから…。
ビギンズナイトがあったから、俺とお前は出会えたんだな。
毎日、お前と笑いあって、幸せだって、思えるんだよな。
「ごめんな、……フィリップ」
心配、かけたな。
俺ってやつは、コレだからいつまでたっても半熟なんだ。自分がどれだけ愛されてんのかも考えねぇでよ………。
「ありがとう、フィリップ。」
もう、寝苦しい夜は来そうにねぇよ。
「おやすみ、フィリップ。」
次、『おはよう』って言うときは、この後みる、きっととびきり良い夢の話、してやるから。
END