半熟×検索


□初めてのオツカイ(連載中)
2ページ/11ページ



―"公園"

 人々が集い、
 各々が自由に過ごす公共の場。

 例えば、子供達が遊ぶ。
 例えば、昼休みの大人達が昼食をとる。


 例えば……



「恋人達が、寄り添う…場……」


「ん?何か言ったかフィリップ?」

ボソリと呟いたフィリップに、翔太郎は問いかける。


「もしかして公園に行きた…、」
「翔太郎!!僕、行くよ!オツカイにっ!!」


ダンッと机に身を乗りだしてフィリップは叫んだ。

「お…おぉ。そうか…?」


そんなフィリップに圧倒されつつも、お金を財布に入れ、買い物様の手提げ袋とセットで手渡す。


「じゃあこれで…頼むな?」

「ぁ、待って、翔太郎。行っても良いが、条件がある。」

「条件…?」


突然提示された"条件"と言う言葉に、少々翔太郎は焦る。

「じ、条件ったって…、金増やせとかは無理だぜ?」

これで限界、と手元の財布を振ってみせる。


「そんな事では無い。と言うか、金が無い事など重々承知しているよ?翔太郎…?」

「お前、それ何気に酷い事言ってるからな。」


サラリと言われた現実に、翔太郎は明後日の方向を見て薄ら笑い。



「僕が出す条件はもっと簡単だよ」

「金意外で…って何だ?」

該当する事柄が見付からず、翔太郎は首を傾げる。


「僕と一緒にオツカイに出かけて欲しいんだよ、翔太郎。」

「え…。それが…、条件?」

「そう。僕は君と一緒に行きたいんだ。」

「俺…とっ?///」


予想外の嬉しい言葉に思わずOKと言いそうになるが、当初の目的に思いとどまる。

「でも…、それじゃあオツカイにならねぇだろ?」



「よくテレビでやってるじゃねぇか。ほら、小さい子が親に頼まれまれた物買って来たり…」

「む…僕は小さな子供では無いっ」

フィリップのムキになる様子に翔太郎は思わず笑ってしまう。

「まっ、そうなんだけどよっ」

「翔太郎…っ!」

む〜っと唸るフィリップに苦笑しつつ、翔太郎は語り掛けるように話した。

「大丈夫だよ、フィリップ。俺は…、お前が帰ってくるまでちゃんと待ってるから。何かあっても電話があるしな。」

「でもっ、」

「そんなに心配しなくたって、この街の人は優しいさ。分からなくなったら聞けば良い。仮にドーパントに襲われてもお前にはボディーガードが…、」

「嫌だ……。」

そこまで言って、途中でフィリップによって言葉を切られる。

「嫌だっ!君と一緒が良い!!」

「フィリップ…」

「僕を守るにはファングでは力不足だ!…君じゃ…ないと…翔太郎っ!!」

「お前…///」


今度は翔太郎の心が揺らぐ。

―だ、駄目だっ
 今回はフィリップにオツカイにいかせるんだ


「フィリ、」

「それにっ!!!!」

フィリップは翔太郎の発声に被せる様に叫んだ。


「それに…、…」

「?」

フィリップは空中に少々目線を漂わせる。

そして控えめに翔太郎を見詰めた。





「僕は……君と、…デー…トが、したいんだよ…翔、太郎…///」

「…デッ…!?///」


  ガターーンッ!!

翔太郎は勢いよく立ち上がる。

さっきまでのダルさは何処へやら。


辺りには倒れた椅子の音だけが、やけに大きく響いた。


「………」

「…しょ…た、ろ?」

立ち上がった後、固まって動かない翔太郎。

「…、しょぉ、たーろ…おっ」


フィリップは不安になり、顔を覗きこんで問い掛けた。


そこで漸く肩を揺らして我に帰る。


「ぁっ!!」

翔太郎は短く声を上げたと同時、フィリップの手を握りしめた。


「わかった、フィリップ!!一緒に、行こうぜっ///」


フィリップから不安な表情が一気に吹き飛び、変わりに満面の笑みが浮かんだ。

「ありがとうっ!翔太郎っ!!///」

フィリップもその手を握り返した。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ