半熟×検索
□初めてのオツカイ(連載中)
4ページ/11ページ
「あ"ー、やっぱ一枚羽織っても寒ぃもんは寒ぃなぁー……」
言葉を発する度に現れる白い息に現在の気温の低さを実感する。
「なぁ、フィリップ…大丈夫か?寒くねぇ…、」
フィリップの身を案じ振り向いた翔太郎は、自分を凝視する彼と目が合った。
「…、どうした?」
「ねぇ、翔太郎…、それは…、と言うかこれはなんだい?」
フィリップはハァ…、っと空中に白を広げる。
どうやら息が白くなるのを不思議に思っているらしい。
何度も何度も息を吐きかけている。
「これは面白いね、」
楽しそうにしている彼を見ていると、翔太郎も思わず微笑む。
―…たまには街に繰り出すのも…悪くねぇな…
普段は街を1人で駆け回っている翔太郎。
街の事はほぼ把握している。
だが今フィリップが隣にいて、同じモノを見ていると思うと、見慣れた街もいつもと違って見えた。
「さて…、先ずは何処行くか…」
立ち止まっていても仕方がないので、2人は取り敢えず歩いてみる事にする。
「やっぱり最初に用事を済ませるのが良いんじゃないかな?」
「用事……?あぁ…本、か。本はもういいや。」
「え…寄らないのかい?」
正直"本"の事が頭の端に追いやられていた翔太郎は、もうその必要は無い。と笑い掛けた。
「お前が行きたいなら別だが…、俺には必要無くなったから。」
「?」
「さっきはただ暇潰しが欲しかっただけで、どうしてもって訳じゃ無かった。今はお前といられて充実してるから……必要ない。」
「翔太郎…、……」
「……、///」
翔太郎は自分で言った事に少々羞恥心を覚える。
照れ隠しにコートに付いている大きめのフードをフィリップに被せた。
「ぅわっ!」
「…顔、見られたら不味いだろ?」
「ぁ…、うん、そうだね。」
フィリップはギュッとフードを目深に引っ張った。
「…で、だ。お前は何処に行きたい、フィリップ?」
「ぇ…僕かい?んー……」
フィリップは例のごとく、指先を唇にあてて考える。
「どこと聞かれると困るのだけれど…そうだねぇ…」
ぐぅぅぅー…
「……、」
「………。」
この場に似つかわしいとは言えない音が辺りに響いた。
「…君のお腹は素直なようだね?翔太郎…クスクス」
「はぁ……俺としては全く素直でいて欲しくねぇんだけどな。」
「ふふっ」
フィリップは腕の時計を見る。
「時間が時間だし…仕方ないさ。」
「んじゃぁ、最初はメシだなー。」
"メシ"
その単語にフィリップはピクリと反応した。
「そうしよう翔太郎!たこ焼きったこ焼きを食べに行こう翔太郎っ!!」
フィリップは少々速足で翔太郎の前へ回り、目を輝かせて訴える。
「ねぇ、たこ焼きっ」
「分かった、分かった。」
興奮気味のフィリップを制しつつ、目的地へと歩みを促す。
「この街で俺に分からねぇ事はねぇぜ!付いてこいフィリップっ」
「うんッ。頼りにしているよ、翔太郎っ!」
→