半熟×検索


□初めてのオツカイ(連載中)
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「あ"ー、やっぱ一枚羽織っても寒ぃもんは寒ぃなぁー……」

言葉を発する度に現れる白い息に現在の気温の低さを実感する。


「なぁ、フィリップ…大丈夫か?寒くねぇ…、」

フィリップの身を案じ振り向いた翔太郎は、自分を凝視する彼と目が合った。

「…、どうした?」

「ねぇ、翔太郎…、それは…、と言うかこれはなんだい?」

フィリップはハァ…、っと空中に白を広げる。

どうやら息が白くなるのを不思議に思っているらしい。

何度も何度も息を吐きかけている。


「これは面白いね、」

楽しそうにしている彼を見ていると、翔太郎も思わず微笑む。

―…たまには街に繰り出すのも…悪くねぇな…


普段は街を1人で駆け回っている翔太郎。

街の事はほぼ把握している。

だが今フィリップが隣にいて、同じモノを見ていると思うと、見慣れた街もいつもと違って見えた。





「さて…、先ずは何処行くか…」

立ち止まっていても仕方がないので、2人は取り敢えず歩いてみる事にする。

「やっぱり最初に用事を済ませるのが良いんじゃないかな?」

「用事……?あぁ…本、か。本はもういいや。」

「え…寄らないのかい?」

正直"本"の事が頭の端に追いやられていた翔太郎は、もうその必要は無い。と笑い掛けた。

「お前が行きたいなら別だが…、俺には必要無くなったから。」

「?」

「さっきはただ暇潰しが欲しかっただけで、どうしてもって訳じゃ無かった。今はお前といられて充実してるから……必要ない。」

「翔太郎…、……」

「……、///」


翔太郎は自分で言った事に少々羞恥心を覚える。

照れ隠しにコートに付いている大きめのフードをフィリップに被せた。

「ぅわっ!」

「…顔、見られたら不味いだろ?」

「ぁ…、うん、そうだね。」

フィリップはギュッとフードを目深に引っ張った。


「…で、だ。お前は何処に行きたい、フィリップ?」

「ぇ…僕かい?んー……」

フィリップは例のごとく、指先を唇にあてて考える。

「どこと聞かれると困るのだけれど…そうだねぇ…」


  ぐぅぅぅー…


「……、」
「………。」

この場に似つかわしいとは言えない音が辺りに響いた。

「…君のお腹は素直なようだね?翔太郎…クスクス」

「はぁ……俺としては全く素直でいて欲しくねぇんだけどな。」

「ふふっ」


フィリップは腕の時計を見る。

「時間が時間だし…仕方ないさ。」

「んじゃぁ、最初はメシだなー。」


"メシ"

その単語にフィリップはピクリと反応した。


「そうしよう翔太郎!たこ焼きったこ焼きを食べに行こう翔太郎っ!!」

フィリップは少々速足で翔太郎の前へ回り、目を輝かせて訴える。


「ねぇ、たこ焼きっ」

「分かった、分かった。」

興奮気味のフィリップを制しつつ、目的地へと歩みを促す。

「この街で俺に分からねぇ事はねぇぜ!付いてこいフィリップっ」

「うんッ。頼りにしているよ、翔太郎っ!」




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