半熟×検索


□初めてのオツカイ(連載中)
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「―…っと、着いた。」

思わず速足になってしまう2人の歩調。

その為すぐに目的地には着いた。


「…ここ…なのかい?随分古い外観だね?」

「なぁーに言ってんだよ。旨い店ってそんなもんだろ?」


彼らの目の前にある小さな店は、フィリップの言う通り多くの年代を重ねた様な見た目である。


「俺はこの店のたこ焼きが一番だと思ってる。お前だって、食ってみりゃわかるさ。」


期待外れだとでも言いたげなフィリップに、翔太郎は軽くウィンクしてみせる。

「この俺の進めだぜ?騙されたと思って、なっ?」

「…翔太郎が、言うなら……」


「あらっ!翔ちゃんじゃないかいっ」

店の前で話していると、店の奥から威勢の良い女性の声が翔太郎を呼んだ。


「あぁ!オバチャン久しぶりっ!!」

「本当だよー。アンタ最近は全然来てくれないんだもの、オバチャン寂しかったんだから!」

「悪かったよ。俺が来ない間店はどうだった?」

「アンタそれ嫌味かい?相変わらずだよっ!!」

「だろうなぁー」

「あははははっ」


久しぶりの翔太郎の訪問を店の女性は喜んでいる様で、楽しそうに話し始めた。

そんな2人の会話を間で聞いているフィリップは、輪の中に入る事も出来ずに1人になってしまう。



「…。」

暫くジッと黙っていたが、何だか寂しくなってきた。

フィリップは翔太郎の服の裾をクイッと引く。

「……翔太郎…」


「―…っ、そうか、フィリップは初めてだもんな…」

翔太郎はフィリップの顔を覗き込み、申し訳なさそうな顔をする。


「…ぁ…、」
―違う。そんな顔…させるつもり無かったのに…


「違っ、翔太郎…っ」

「悪かったな…」

翔太郎はフードの上からフィリップの頭を軽く撫でた。



「紹介するよオバチャン。こいつ、俺の、あぃ…」

「そうそう、さっきからその子、気になってたんだけどねぇ?」

翔太郎の言葉に彼女の声が被せられる。

「…、うん、だから、俺の……」

「でもね、何も言わなくてもオバチャン分かってるわよ…」


―…紹介、…出来ねぇ

チラリと横目でフィリップを見ると、彼も翔太郎を見て苦笑していた。


―…凄い女性だね、翔太郎…
 僕、あんな人初めてだ。

―…だろ?良い人なんだがなぁー
 時々こうなって困る…

―…ふふっ

―…ってか、何だコレ?テレパシー?



「…、」

ジッとお互いにを見詰め合って動かない2人に、彼女は身を乗り出す。

「もー!こんな昼間っからアツいわね!!その子、翔ちゃんの"彼女"でしょ〜?」

分かってるんだからー!と女性は豪快に笑った。



  "彼女"

「…」
「……」

女性の大きな笑い声が響く中、2人はフリーズした。



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