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ミーンミーンと蝉の声が響き渡る7月の6時限目がおわった。
田中は、そそくさと帰っていく同級生を恨みがましい目で見つめながら、教卓の上に山と積み上げられたノートの束をみやる。
本日の6間目は国語。
課題を忘れた田中は担当教師にノート提出の荷物運びに任命されてしまった。
期末テストが近付いている為、皆必死で頑張っている。
テスト期間は明日から。
部活動をしている人間は、今日が最後!と、いつもの数倍活気があふれているのではないか
お陰で数少ない帰宅部の田中は、
「田中、部活もしてないし調度いいな。」
との理由も相俟って係りに選出されてしまった。
はぁ…。と深い溜息がもれる。
仕方ない。
ある意味自業自得だと自分に言い聞かせ、田中は鞄に残りの教科書らをつめこみ、ふと窓から見えるグラウンドに視線を飛ばす。
陸上部が走り、サッカー部が走り。水呑み場には人が溢れている。
「いつもより人、多くないか?」
自然と呟いていた。
この白鳥学園は男女共学ではあるが、
圧倒的に男子が多い。
それは数年前まで男子校だったのが共学に変わったからだ。
なかなか一気に女子率は増えない。
(それでも、居ないよりは断然天国である)
まるで、そんな生徒の心を汲み取るかの様に、兄弟校である桜ノ宮学園とやたら交流が深い。
桜ノ宮学園も共学校ではあるが、女子率は断然高い。
部活での交流が特に密にあり、2ヶ月に一度はどちらかの学園に赴き、対抗試合なんぞをしているのだ。
多分今日はその日なのだろう。
グラウンドに人が溢れ、観戦者もいる。
普段よりも黄色い声が飛んでいるようだ。
そりゃ、士気もあがるよな、と納得してしまう。
何気なく、田中は窓ごしにそんな活気溢れるグラウンドを見渡した。
と、その端に位置する水呑み場に、目が奪われた。
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息がつけない。
どの位たったのかも、わからなかった。
息苦しくなって、ゆっくりと息をつく。
な、なんだ?!