アイシールド21夢

□特別な日
2ページ/2ページ

息が切れる前にコンビニにたどり着けたけど、時間が時間だからか人がたくさんいた。
レジはまだ空いているけどあんまり時間をかけるとお昼を食べる時間がなくなりそうだ。
僕たちは慌てて目当てのものを取りに行った。


「おっしゃ、バナナ〜」


モン太がキャッチした時のようにバナナを掲げる。
棗はその近くで何種類かあるパックの紅茶を眺めていた。


「…同じミルクティーにもこんなに種類があるんだ」

「だな〜。でも味なんて似たようなモンだろ?」

「(ふるふる)」


手に取っていたミルクティーを片手に、棗が苦笑する。
棗はよく紅茶を飲んでいるから飲み比べたことがあるのかも知れない。
棗は期間限定、と書かれた少し高いミルクティーを手にとってお菓子売り場へ。
そこでヒル魔さんがよく食べている無糖ガムと美味しいけど高めのチョコを持ってレジに並んだ。
僕もモン太も遅れないように商品を持ってレジに並んだ。


「棗って無糖ガム食べれるのか?」


頼まれていたドリンクの粉も買って、あとは帰るだけの道のりでモン太が聞いた。
棗はかなり素速く首を振って、ムリムリと笑う。


「ならヒル魔さんの…?」

「(こくり)」


残り少なかったから、と笑う棗にモン太と2人で驚いた顔をした。
そんなこと、僕たちは全然気づかなかった。
棗だからこそ気づいたんだろうなと思って、隣を笑う人のことを思う。
ヒル魔さんと同じように、知らない内に僕たちは棗の恩恵を受けてるんだろうな…。
クラスの友達だったり、他の部活の人にだったり、色んなところで耳にする言葉。
"沫咲さんがいてくれるって、なんか良いよね"
言葉では上手く言えないけど、棗の近くは雰囲気が柔らかで、なんて言うか…落ち着ける。
あのヒル魔さんでさえ棗といると優しく笑うような気がするし。
夏休みのデスマーチでチームメイトの結束はすごく強くなってたけど、棗が入ってくれたことでそれがもっと強固になった気がする。
だから棗の笑顔を見る度、プレーを重ねる度、なんだか誇らしくなって、嬉しくなって、胸を張りたくなる。
自分達のプレーひとつで大好きな人を笑顔にすることが出来る。
これって実は、本当にすごいことなんじゃないかなって、思うんだ。
隣を見ればはにかむように笑う棗。
嬉しそうにキラキラ輝く瞳は手元のお菓子だけじゃなく、未来にだって向けられているはずだ。


<このチョコ、好きなんだけどちょっと高くてね。あんまり食べられないんだけど、今日はぜいたくしちゃった>

「今日はなんかあんのか?」

「記念日、とか?」


可愛く笑う棗に聞けば、棗はかぶりを振って否定した。
ならなんで?とユニゾンして聞くと、それを笑いながら返事を書いてくれた。


<なんとなく、かな。今日は特別!>


そう笑った棗はすごく可愛くて、ドクン!と心臓が一度強く鳴った。









>棗ってすっごく幸せそうにお菓子食べるよね…。  だな。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ