どマイナー夢
□ある男との出会い
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"元ヤクザ"という肩書きは正直、重い。
おれなんかのために指を詰めた須賀は、とりあえず無事に退院した。
迎えに行くと、須賀は看護師の前でミカ!と嬉しそうにおれを呼んだ。
そのせいで看護師の間で噂になっていた須賀さんの彼女(=ミカちゃん)がおれであることがばれた。
おれと看護師は互いに驚愕の表情をしながらも、その病院を後にした。
…何かあっても、行き辛いじゃねぇかバカ野郎。
家に帰ってから、本当に振り込まれた退職金を前に話し合い。
(半分ヤクザなおれたちも、一応は金融業を退職したと言うことになっている)
これから、どうするか。
須賀は左手の小指を詰めた。
一応はくっついたそれだが、見た目には少々派手な傷跡になった。
見るものが見れば、どう考えたってわかる。
だけどあそこから抜け出せたのは須賀のおかげで、…須賀がいたおかげで。
須賀が指を詰めた瞬間、どうにかなるかと思った。
死にそうに、悲しくて
死にそうに、痛くて
死にそうに、こいつが必要だと思った。
この指は、なくてはならなかった…もの。
この男は、なくてはならなかった…おとこ。
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