映画/flat夢

□未知との交流
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セクター7本部というダムに連れてこられたナツメは、未だにセクター7関係者たちに強い不信感を持っていた。
だが前を歩くデイビッドは警察官という職業柄か努めて冷静でいるように見えた。
しゃんと背筋を伸ばして歩く姿がナツメを安心させてくれるが、今ここにはいない両親のことが気になる。
そして何よりも捕らえられてしまったバンブルビーのことが頭から離れない。
行く先には軍服を着たシモンズがふたりを待ち構えていたが、ナツメはデイビッドが立ち止まらなければ無視をして通り過ぎるつもりでいた。
だが残念ながら従兄であるデイビッドが足を止めてしまったせいで、ナツメも同じように立ち止まるしか無かった。


「君たち、まずい初対面だったな。空腹だろ?ラテかマキアートでもどうだ?」


そういってナツメの肩に触れようとしたシモンズだったがナツメはとっさに身を引いてその手を避けた。
自分たちがしたことを忘れたかのような言葉と行動が、ナツメには全く理解できなかった。
今更、話し合えばわかりあえるとでも言うつもりだろうか。自分たちにもビーにも詳しい事情を話さず・話させずにいたくせに。
ナツメのあからさまな拒否をシモンズはどう思っただろう。
頑固な女だと思っただろうか。それともエイリアンの肩を持ち人類の敵に回った裏切り者だとでも思っただろうか。
たとえどう思われようとナツメはどうでも良かった。言葉が通じない同種族よりも言葉の通じるバンブルビーの方がナツメに取っては大事なのだ。
突然家を尋ねてきて理由も話さず拘留した男たちと、自分たちを助けようと動いてくれた男たち。
どちらを信じるかなんてわかりきったことだろう。たとえ助けてくれたのがエイリアンだったとしても。
デイビッドはシモンズから距離を取ろうとする従妹の腕を取り、彼女と腕を組むことでなんとかナツメの逃亡を阻止した。


「正直に言う。まずい初対面にしたのはそっちだ。勝手に人の家に上がり込んで理由も話さず我が物顔であたりを調べ回って。
 あげくに俺たちの話しも聞かず勝手に連行したと思ったら、バンブルビーまで捕まえるなんて」

「君たちよく聞くんだ。人の命がかかってる、知っていることを話せ」


またも現れたおそらく言葉が通じないだろう人間に、ついにナツメはデイビッドの腕を解いて彼の後ろに隠れてしまった。
言葉が正しく伝わらないのなら話してもどうせ無駄だとでも思っているのだろう。
デイビッドも頭ごなしすぎる言葉たちに苛立ちが募っていた。
警察官であるデイビッドにはこういった状況下に覚えはあるが、セクター7の人間の行動には正義感が無いように思える。
これでは"疑わしきは罰せよ"と言っているようなものではないか。


「知っていることを話せ?ハッ、今更なに言ってるんだよ。
 話し合えばお互い嫌な思いをせず協力できたかもしれないのに、あんたたちが拒否したんだ!
 これ以上ナツメやナツメの両親を危険な目に遭わせてみろ、お前らを必ず地獄に落としてやるっ!」


言葉を荒げたデイビッドにナツメは驚きを隠せなかった。
デイビッドは確かに熱血漢なところがある。だが頭ごなしの否定をするような子どもではない。
常に自分を律し、警察官としての職務を果たそうとしている彼がここまで荒々しく怒ることは今までなかった。
ナツメは戸惑いながらも小さくデイビッドの名前を呼んで、彼を落ち着かせる。
呼びかけに気付いた彼は、ナツメの顔を見て少々気まずそうな表情を見せると彼女の手を取ってまた歩き始めた。
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