映画/flat夢
□未来への一歩
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そんなときヘリの音が聞こえてきた。ナツメに近づくことはできないようだが、キューブを渡すチャンスはまだある。
それならばこんなところでまごついているよりも、一か八かにかけてみるしかない。
たとえ自分が死んでしまったとしてもキューブさえディセプティコンの手に渡らなければ未来は繋がるはずだ。
近くにいたオプティマスがキューブを護って逃げてくれるかもしれない。
ナツメは最後の言葉になるかもしれないと心の中で思いながらも、勇気を一滴も無駄にせずはっきりと叫んだ。
「"オールスパーク"は渡さない!」
「何と愚かな奴だ」
動き出すメガトロンの姿にナツメは恐怖を感じながらも、強く強くキューブを抱きしめる。
たとえ落ちてもーーー死んだとしても、この腕からは失くさないように。
メガトロンが振りかぶった鉄球はナツメ自身には当たらなかったが、衝撃で像から手が離れた。
重力に逆らうことはできず、ナツメは悲鳴を上げながら落下していく。
それでもとっさに抱え直したキューブを両手に抱きしめながら、ナツメは風を切って落ち続けていった。
「受け止めたぞ」
その言葉にナツメは飛びかけていた意識を無理やり浮上させた。
ナツメは地面に叩き付けられることなく、途中でオプティマスの手の中に保護されたのだ。
「オ…オプティ、マス、さ、、」
「ナツメ、キューブを放すな。掴まっているんだ」
なにが起こったのかナツメが判断できないうちにオプティマスはビルの間を交互に行き来しながら地面へと降りていく。
飛ぶことができないオプティマスは間を行き来することで地面に降りたときの衝撃を少なくしようとしているのだ。
ビルにぶつかる度あがる声に、彼が痛みを感じながらもナツメを助けようとしていることがわかる。
ナツメは言われた通りキューブをきつく抱きしめ、オプティマスから落ちないようにしがみついていた。