映画/flat夢
□宝を奪う風
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「な、にを…っ?」
「ねえアーデス。…愛しているのよ、本当に」
「ならば…!」
「だけれど、…私は砂漠に生きるべき人間じゃ、…ないわ」
「…!」
「ねぇ、アーデス…」
吹き抜ける風。
舞う砂塵は、どこへ行くのだろうか。
彼女は、どこへ行こうというのか。
愛する人は、どこへ行こうというのか。
「…ごめんなさい、アーデス」
「…っ、ナツメ…ッ」
「愛しているの」
「待ってくれっ!」
「でも、ごめんなさい。…私は、砂漠では生きられない」
伸ばそうと思った手は、なにかに絡め取られたように動かない。
声すら、足すら、なにも自由にいかない。
「…アーデス…」
「(待ってくれ、待ってくれっ!)」
「さようなら…」
「(愛しているんだっ…!)」
風が吹く。
すべてを奪い取るように、強い風が。
その風は、私の愛する人を連れ去ってしまった。
>砂のようにこの手からこぼれ落ちたのは、かけがえのない、たった一つの