映画/flat夢
□静かな日常が壊れる音
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晴れ渡った空が眩しい。
フランクとタルコニはその真っ青な空の下、釣りを楽しんでいた。
といってもタルコニは寝ていたし、フランクはあたりの来ない釣りに飽き飽きしていた。
ナツメは今何をしているだろう。
フランクは家にいるはずの恋人のことを思った。
タルコニと釣りに行ってくる、と告げると慌てたように帽子を手渡してくれた彼女。
夕食用のお魚が手に入るのかしら?と笑っていた。
「フランク。あー、彼女は元気か?」
「彼女?ああ、ナツメなら今日のデザートを作ると言って張り切ってたが」
「そうか。あまり君と一緒にいるところを見ないから」
「…あぁ」
フランクは小さく返事をした。
自覚はあったらしい。
フランクは家の中以外でナツメと一緒にいることが少ない。
街へ買い物に出るのもフランクが仕事のついでに送り迎えするか、フランクが買ってくる。
ナツメとデートへ出かけると言うことも少なく、基本的には家の中でふたりきりの時間を過ごしている。
もちろん、それが悪いというわけではない。
家の中でもテレビを見たり、一緒に食事を作ったりと楽しめることはある。
だがそれがタルコニには少し奇妙に見えた。
「彼女と出かけるのが嫌な訳じゃないんだろう?」
「もちろん。ただ、…いや、なんでも」
フランクはなにかを言いかけて、口を閉ざしてしまった。
タルコニは隣で苦しそうに瞳を伏せた友人の肩に手を置くと、鳴り始めた電話を取った。