映画/flat夢

□行進
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次にナツメが目を覚ましたのは、全く知らない場所だった。
服は替わっていないが、時計の代わりに重くてごついブレスレットがはめられていた。
ベッドから起き上がると、もう一度部屋全体を見渡す。
だがクロークと備え付けられた小さなキッチン以外には何もない。
ドアから出ようと立ち上がると、それを監視していたとでも言わんばかりのタイミングで屈強な男が二人静かに入ってきた。
肩からかけられたマシンガンにナツメの顔が青ざめるのを見た男たちは嫌な笑い方をした。
ゆっくりと距離を取ろうと後ろへ下がろうとすると、男がマシンガンを構えた。
そして一言。


「ついてこい」


と強く命令した。
ナツメは青ざめた顔のまま、震える足を叱咤してその男たちに従った。

***

男たちに従って歩くと、ガレージへ連れてこられ後部座席に押し込められた。
その車は見慣れたフランクの車そのものだったが、助手席には見慣れない女性の姿があった。


「…昨日の」


ナツメが小さく言うと、赤毛の女性ーーーヴァレンティーナーーーは横目にナツメをにらんですぐに前へと向き直った。
ツンと突っぱねた態度に少々驚いたが、同じように巻き込まれた仲なのだとしたら恐ろしくてたまらない気持ちがわかってもらえるだろう。
そう思ってナツメはもう一度口を開いた。


「あの…、ここはどこだか知ってますか?それと、この人たち…」

「………」


ヴァレンティーナは前を向いたまま、身動き一つしなかった。
恐ろしくて声が出ないのか、それともなにか訳があるのか…。
可能性として目の前にいる彼女が敵だとは考えられないし、考えたくない…というところまで来たとき。
フランクがようやく現れた。
ナツメは一瞬にして瞳に生気をみなぎらせ、フランクの名前を呼ぼうとした。
だが横にいる男のマシンガンが素早く動いたのに気づき、口をつぐむ。
視線を向けるがフランクは全く気がつかない。
いかにも悪役といった男ーーージョンソンーーーが目の前のヴァレンティーナに拳銃を突きつけると、ナツメは驚きの声を上げた。
そこでようやくフランクがナツメに気がつき、男に食ってかかった。
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