映画/flat夢

□走る
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ヴァレンティーナが後部座席に来たので、ナツメは助手席に移ろうとした。
だが疲れているのかわざとなのかヴァレンティーナはナツメの肩に頭を預け寝入ってしまった。
ナツメはフランクに申し訳なさそうな視線を送ると、彼は苦笑気味にそれを受けた。
ブダペストへと向かう途中、フランクはジョンソンに電話をかけた。
交渉を行うためらしい。
フランクのこわばった顔に、命がかかった任務だと言うことを改めて思い知らされる。


「ブダペストって行ったことないわ」

「そうか。温泉や民族音楽、パプリカ料理。それと、実はザッハトルテはハンガリーが元々の本家らしい」

「ザッハトルテ!」

「デザートになるとナツメは瞳が輝くな」

「甘いもの大好き!いいな、食べてみたい」

「今度来よう。…ふたりで ゆっくりと観光地を巡って、贅沢な食事をして、ホイップクリームをたっぷりのせたザッハトルテで締めくくろう」

「街中は腕を組んで歩きましょうね。約束よ」

「…ああ、約束だ」


少し照れたようだったが、フランクはしっかりとうなずいた。
几帳面な彼のことだ。
きっとこんな戯れのような約束もしっかり守ってくれるだろう、とナツメは確信していた。
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