映画/flat夢

□はじめから
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ガソリンスタンドではハイになったヴァレンティーナがさんざんやらかしてくれた。
フランクもナツメも呆れてものもいえないという状況になっているのにも気づかず、ヴァレンティーナはウォッカを片手に帰ってきた。
フランクが先ほどから前に止まっている車をいぶかしげに見ていることに気がついたナツメはそちらに視線を向ける。
ちょうど男が車に乗り込むところだったのだが、ヴァレンティーナがわめきだしたので振り返る。
するとフランクがやけに怖い顔つきをしていた。
そしてヴァレンティーナを抱えて後部座席に放り込んだのを見て、彼らが好ましくない人物だとわかった。
ナツメは素早くヴァレンティーナの隣に乗り込むと、暴れる彼女にシートベルトをかけた。
次に自分のシートベルトをかけたのと同時にフランクが乗り込み、ハンドルを切った。

ぶれのない運転とスピードで相手と距離を取っていたが、追っ手は車に無理をさせて追いついてきた。
ヴァレンティーナはクスリのせいで歓喜の雄叫びを上げながら、シートベルトを外す。
そして音楽をかけて陽気に笑う。
ナツメがどうにか抑えようと彼女の手を引くが、フランクがナツメを呼んだ。


「つかまれ」


その声に反射的に手すりを掴むと、フランクはトラックの間の細い隙間を片輪走行で抜けるため車体を浮かせた。
ナツメはヴァレンティーナの下になるため彼女の身体と自分の身体を支えつつ、必死にバランスを取る。
体重が寄ってしまえばひっくり返る可能性もあるのだ。
だがフランクは危なげなくその隙間を抜け、林の中へとハンドルを向ける。
状況がわかっていないのかヴァレンティーナはお腹すいた、とのたまう。
フランクは冷静に対応しながら追っ手を得意のドライビングテクニックで翻弄する。
拳銃の音がしてナツメは暴れるヴァレンティーナを渾身の力で押さえ込む。
だが押さえ込まれたヴァレンティーナは楽しそうにケラケラと笑い続けるのだから始末に悪い。


「ヴァレンティーナ!死にたいの?!」


ナツメの声に驚いたのか、ヴァレンティーナは静かになる。
そして崖の先に来る頃には小さく丸まって、自分を抱きしめていた。


***
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