映画/flat夢

□かけがえのないもの
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湖から救出されるとフランクはまずナツメをタルコニに預けた。
冷え切った身体を毛布で温めてもらうと、ナツメは警官が用意していた男物のシャツとズボンに着替えた。
それはナツメにとってずいぶんと大きく、何度も折り返さなければ手の先は見えてこなかった。
しかも大きすぎるそれはナツメの華奢な身体をありありと見せつける結果になり、ベルトで限界まで絞ったウエストは警官たちの視線を誘った。
フランクは男たちの視線がどこに集まっているかを悟ると、ナツメを助手席に入れてしまった。
タルコニに簡単な事情を話しながら待っていると、ようやくエンジンがかかった。
普通は湖に落ちてしまえばエンジンなどなかなかかからないのだろうが、さすがフランクの車は特殊である。
すると素早くフランクが運転席に乗り込んできたため、ナツメはシートベルトを締めてタルコニに謝りながらフランクと共に列車を追うことになった。

橋の上で停車すると、フランクはナツメの頬にキスをした。
きっととてつもないことをするのだろうとナツメも予想がついていたが、この車からは離れられない。
ナツメはフランクにされたように同じくキスを返すと、シートベルトを確かめて手すりにつかまった。
大きな揺れと派手な音を立て、車が列車の屋根に乗る。
ナツメは驚きに目を見開きフランクを見る。
フランクは自慢げに笑って見せると、ナツメを抱きしめてからひとりで出て行こうとした。


「フランク、」

「ここで待っててくれ。絶対に戻ってくる」


その言葉にうなずくと、フランクはナツメの頬を撫で列車内に向かう。
ナツメはその場で祈ることしかできなかった。


***
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