映画/flat夢
□時の川
1ページ/2ページ
「そういえば」
「へ?」
「そういえばラブレターの返事、したんですか?」
お気に入りのジャムとクロテッドクリームを沿えたスコーン。
飲み物はダージリンティー。
アフタヌーンティーにも似た優雅なそれらをきっかり午後3時に食べながら、棗が言った。
スコーンは棗の手作りで、かぼちゃが練り込んである新作だ。
そのおこぼれを食べながら、平介は間抜けな声を発した。
「あー、したした。応えられないって」
「…そうですか」
「姉さんは?」
「ああ。…私も同じです、応えられません、と」
「そっか」
少しだけしんみりした空気。
静かな空間に響くのは、陶磁器同士がたてる小さな音だけ。