映画/flat夢

□時の川
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なぜ、特に話したこともない人にそんなことを言われたのかも分からない。
そしてどこに惚れられたのかも分からない。
友達と笑いあっていた訳でもない。
誰かに愛想良くしている訳でもない。
なのになぜ。
彼は自分のなにをみて、心を動かされたのか。


「どこを、好いてもらったのか…よく分かりません」

「うん、俺も」

「…難しいですよね」


しみじみとそう思って、棗は瞳を閉じる。
真っ赤な頬と、耳。
どもりながらも自分の名前を呼んでくれた声。
まっすぐに見つめてきた瞳が、悲しみに染まる瞬間。

ーーーあんなにまっすぐに人を、想うことができるなんて

ずるい、とうらやめばいいのか。
それともすごい、と関心すればいいのか。
今はまだ分からなくても、いつかはわかる日が来るのだろうか。
友達よりも、親兄弟よりも、好きな人を欲する日が、来るのだろうか。


「…恋とか、結婚なんて全く予想もつきません」

「俺も。まず高校出たあとの予想もつかないし」

「平介はまず3年になれるかの予想も付かないですしね」

「あーーー。頑張りますよー」


少しだけ大変そうで、けれど面倒だという色を隠さない声に少し笑って
棗はいつの間にか冷めてしまった紅茶を飲んだ。




ゆっくりと、だが確実に流れる時の川




>平介はお菓子と結婚しそうでいやですね…。  なにそれ
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