映画/flat夢

□私の唯一
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「アーデス、食事の用意が出来たわ」

「あぁ。今行く」


目の前で微笑んでいるのは私の婚約者であるナツメ。
あと数日もすれば婚礼の儀を行い、晴れて私の妻になる愛しい人だ。
幾度となく愛を交わし、愛を誓い、隣で生きることを願った人だ。
けれどここまでたどり着くまでに多くの困難があった。

もう二十年近くも前のある日、当時の長の側近達が馬を急がせて長の元へ駆け込んできた。
ちょうど年長者達と話をしていた長に伝えられたのは、驚きの言葉だった。
"空から赤子が舞い降りてきた"
その言葉に誰もが側近ふたりの目を疑ったが、彼らは長に仕えている誠実な者たちだ。
嘘や謀りなどするわけもない。
そんなとき、側近の腕の中で声がした。
抱きかかえていた赤子が泣き出したのだ。
長はその赤子を自分の妻に預け、側近達から詳しく話を聞くことにした。
側近達は砂漠を警邏していたとき、ふたり同時に頭痛に見舞われ、空からなにかが落ちてくるのを見つけたのだという。
馬を急がせてそれを追いかけ、ぎりぎりのところを手にしたところ、それは赤子だったのだという。
長や年長者が言葉をなくしているとき、長の妻が慌てて部屋に駆け込んできた。
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