どマイナー夢
□前方不注意。
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「おいっ、リディ!」
その綺麗な人が上げた大声。
そして呼ばれた"リディ"さんは私の目の前。
と、いうことは。
「キャァッ」
「ぅわっ!」
当たり前にぶつかるわけで…。
「いたぁ〜…っ」
「イタタ…。あ、ごっ、ごめんなさっ…!」
目の前で、私の頭がぶつかった胸を押さえている"リディ"さん。
美人で、一瞬女の人かと思った。
声や体つきで男の人だって解ったけれど、それにしても美人さんだ。
私はこんな美人さんにぶつかった左肩をちょっとだけ羨ましく思いながらその肩をさする。
簡単な話で、私の行く方向に真横から来た"リディ"さんがぶつかっただけ。
奥から駆けてくるのは、つい見とれてしまった金髪の人。
「なにやってんだ、リディ。…悪いな、大丈夫か?」
「……ぁ…、は、い」
差し出された手を掴んでも良いものか。
ずっと見つめる側と見つめられる側(きっとこれすら彼は知らない)だけの関係だったのに。
でも、この美しい人に触れたくして仕方なかった。
肌の熱さや、脈打つ鼓動、肌と肌が触れ合って、指を滑る感触。
すべてが知りたかった。
差し出された手は、少し冷たかった。
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