どマイナー夢

□橘の彼女
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「お前らに紹介しとく。棗だ」

「はじめまして」


そう言って肩を叩かれた子は、まだ20歳前後の若い子だった。
後ろで神田君は橘を指さして、ロリコン…!なんて声を張り上げていたけど、
何でかな。
…僕には、橘が彼女を選んだ理由が、何でか、手に取るように解った。


橘が僕たち、店のメンバーに彼女を紹介するのは かなり珍しい。
…違う、初めてだった。
僕たちには彼女がいるかどうかを悟られるのも嫌がっていたのに、何故か棗さんだけは紹介した。
その理由を神田君は見せびらかしたかったからだ、と言った。
オヤジなのにあんな美人で若いねーちゃんを捕まえたから、その証拠を言いふらしたかったんだ、と。

僕はそう思わなかった。
そして、千影さんも。


彼女は。
…棗さんは、どこか影を背負った人だった。
彼女自身ではどうにもならない、一瞬でも隙を見せればその闇に取り込まれてしまうんじゃないかと思わせる程、暗くて重い闇を持っていると。
橘はきっとそれに気がついたんだろう。
もしかしたら自分も同じような闇を持っているからかもしれない。

彼女は、橘の隣で、綺麗に微笑む


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