どマイナー夢
□私が彼を恐れる理由
2ページ/11ページ
「棗ちゃん」
「ぁ、はい」
「シフト、平気?」
「…あ、多分…?」
「多香子ちゃんが変えたらしいから、目ェ通しといて。明楽が持ってるから」
「わ、かりました…」
この緊張感は、伝わるだろうか。
多分(というか確実に)私しか緊張していないのだろうけど、
あの目が私を見ていると思うと、指先まで見られているようで神経を使う。
あの声が私を呼ぶのかと思うと、一言でも聞き逃してはいけないと思う。
優しくされるととても嬉しくて、でも私が緊張していることに罪悪感が湧く。
牧さんはきっと私が自分に苦手意識があると言うことに気がついている。
私より13歳も年上で、経験豊富で、人生経験があるのだ。
だけど他のスタッフと同じように私に接してくれて、気を遣ってくれている。
基本的にふたりきりにはならないようにしてくれているし、あんまり嫌味も言わない。
温かくしてくれているのも、優しくしてくれているのも、わかっている。
毎日毎日、肌で感じる。
…でも、と続く私が、とても嫌だ。