どマイナー夢
□それを、望む
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「棗、欲しいモンあるか」
名前を呼ばないで
欲しいものを聞かないで
わたしを見ないで
あなたの意図しない一言で ただの名前が、特別なものになってしまう
あなたのことが欲しいと あなたのなにもかもが欲しいと言いたくなってしまう
あなたがわたしを見つめるたび あなたのまぶたに、細胞に、わたしを刻みたくなってしまう
「…なんにもない、欲しいものなんて」
ほんとうは、欲しい
だけど 悲しませるだけだから
悲しませて、悩ませるだけだから
「んなこと言うなよ なんかあるだろ?」
優しくなる声色
きっと、あの薄い瞳を細めて笑ってる
「十和ちゃん …伯父さん」
震える手から携帯をはなせば 指が冷えていたことに気がついた
冷たくなった指と 耳に残るサギさんの声が
どうしようもなく わたしを悲しくさせる
「 …サギさんが 欲しい、よ… 」
呟いて、言葉が消えていくのを間近で見た
今の言葉みたいに この気持ちも消えてしまえばいいのに
お金を積んでも
命をかけても
体を売っても
どうやったって 手に入らないものを 望んでしまった
わたしは どこに行けばいいんだろう
夢の中でさえ手に入らないそれを、望む
>諦めるために、もう会いたくないのに 好きでしかたないから、会いたくてたまらない