アイシールド21夢

□初めまして、
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40日間の地獄の特訓が終わり、学校が始まったその日。
クラスメイトが一人増えた。


「あー、転入生の沫咲 棗さんだ」


先生がそう言うと、沫咲さんがペコリと頭を下げた。
そのまま彼女の挨拶が始まるんだろうと思ったら、先生が口を開いた。


「あー、彼女はもとはアメリカにいたそうだが、突然声が出なくなってしまったそうで、日本に帰ってきた。
 そういうわけだから、何か困っているようだったら力を貸してあげてくれ」


そう言い終わると、沫咲さんはもう一度頭を下げて先生を見た。
先生が僕の隣の席を指さすと、沫咲さんは頷いて軽い足音で僕の隣に座った。
鞄から、砂鉄を利用したボードを取り出して<よろしくね>とシンプルな挨拶をしてくれた。
僕もそれに答えて、ホームルームが始まった。



沫咲さんがボードを持っていたことに安心したのか、休み時間になると彼女の隣にはクラスメイトがたくさん集まってきた。
矢継ぎ早に質問攻めにするようなこともなく、大抵は頷くか頭を振って否定するかの質問形式で聞いていたから、彼女もホッとして何度か笑顔が見られた。
優しくて可愛い笑顔に僕もなんだかホッとして、チャイムが鳴ると次の授業の科目を教えてあげた。

帰りのホームルームが終わって、部活に行こうとした僕を沫咲さんが引き留めた。
ちょっと申し訳なさそうな顔で、ボードに書き込む。
ボードが向けられると、そこには彼女らしい少し丸い文字で<アメフト部ってどこにあるか、知ってる?>と書かれていた。
その文字にビックリして固まると、まだ教室に残っていた十文字くん達が声を掛けてきた。


「おいセナー?早く行かねーとヒル魔が怖えーぞぉ?」

「…あっ、うん」


沫咲さんは黒木くんの言葉にちょっとだけ慌てて、ボードを消そうとした。
きっと引き留めてゴメン、とか書くんじゃないかな…。


「あ、沫咲さん、違くて…。えっと、僕たちもアメフト部なんだ」


そう言うと沫咲さんはパチクリと瞬きをした。
その驚いている様子が可愛くて、少し笑うと沫咲さんも笑ってくれた。


「一緒に行こう」

「(こくんっ!)」


誘うと、笑顔とともに大きな頷きが返ってきて、その笑顔がとても可愛かった。
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