アイシールド21夢

□救いの言葉
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下駄箱でヒル魔、栗田、まもりと一緒になった棗は、今日の予定について話し合いながら部室に向かっていた。
まもりと棗に割り振られる仕事に頷きながら歩いていると、部室の横でふと聞き慣れた声が聞こえた。
棗は素速く顔を上げ、声の聞こえる方へ首を回す。
するとそこには彼女の幼なじみである、ムサシの姿があった。

ダッ!
そんな擬音のつきそうなスタートダッシュを見せ、棗はその3人の元から走り去った。
そして片手に工具箱を持ったムサシの腰に思い切り抱きついた。


「ぉっ、棗っ?」


ムサシは抱きつかれた一瞬で幼なじみだと判断した。
問いかけられた棗が抱きついたまま大きく頷くと、彼女の頭に手を乗せる。
そしてその黒髪を優しく梳いた。


「久しぶりだな」

「(こくんっ)」


勢いよく頷く棗にムサシは僅かに笑む。
彼を見上げる瞳も表情もキラキラと輝いて、見えない尻尾が勢いよく振られている。
ぎゅうぎゅうと力を込めて抱きついているようだが、ムサシには全く効いていない。
だがそれすらも嬉しいのか、棗は驚くほど嬉しそうな笑顔を見せてた。


「こっちに帰ってきたのか?ご両親はどうした?」

「………」


あのね、と話し出そうとするが、いかんせん声は出ない。
ボードを取り出して伝えればいいのだろうが、そうするためにはこの腕を放さなければならないーーー。
考えあぐねているところにヒル魔たちが近づいてきた。
他の部員たちは少し遠巻きに見つめている。


「よう、糞ジジイ。ずいぶんと良い格好じゃねーか」


からかうようにニヒルに笑うヒル魔。
だがムサシを射すくめる視線はまっすぐで、ムサシはその理由を悟ると僅かに眉を寄せた。
棗ちゃん、と柔らかく棗を呼ぶまもりも、意識をムサシから自分へ持っていこうとしているのが分かった。
ムサシは自分の幼なじみの影響力と人を惹き付ける能力の高さに苦笑して、彼女の背に手を回した。
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