アイシールド21夢

□笑わない瞳
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全国アメフト抽選会当日。
泥門デビルバッツのメンバーは駐車場で待ち合わせをしていた。
棗は幼なじみであるムサシの隣で嬉しそうに笑みを浮かべ、時たま周りを見渡している。
知り合いがいないかと探しているようだが、目的は達せなかったようだ。
隣に立つムサシはヒル魔によって髪型を変えられ、今はモヒカンになっている。
棗はその変わりように一瞬固まったものの、タケ兄はタケ兄だもんね、と笑った。
生まれた時から重ねた年月は、見た目が変わったくらいでは障害にすらなり得なかったようだ。

ちなみに、自分たちの目の前にあった武器でセナとモン太が吹き飛んだのを見て慌てて駆け寄る姿が、メンバーたちの心を癒していたことを、彼女は知らない。


会場にはいるとそこにはたくさんの人間がいた。
選手やマネージャー、監督にカメラマンや記者などが溢れかえっている。
人の多さに圧倒され棗が身を堅くすると、ムサシはその微かな怯えにすら目聡く気がついて彼女の頭を撫でる。
少しは緊張が薄れたのか僅かに笑んだ棗にムサシも口元をあげる。
棗の様子にまもりやヒル魔もさりげなく彼女を守るように近くに立ち、最強の包囲網が完成した。
この第2マネが異様な人気を博していることは周知の事実だった。(知らぬは本人ばかり。)
棗がいることに気がついた記者やカメラマンが早速棗に話しかけようと近づくが、まもりと鈴音が先にそれに答えてしまう。
ヒル魔とムサシはチラチラと他の選手から向けられる視線を感じながら、棗と話し込み仲の良さを見せつける。
だが話に答える棗の笑顔は2人の陰に隠れて見えないという完璧さ。
セナや十文字たちはこの計算高すぎる先輩たちの存在に少々顔を青くした。

くじ引きが始まり、段々とトーナメント表が埋まっていく。
ふと、西部のメンバーを見つけて棗は嬉しそうに目を輝かせた。
自分たちの関東大会出場決定は、ワイルドガンマンズの選手である鉄馬丈の犠牲の上で成り立っている。
謝ることが正しいとは思えないが、一言お礼を、という気持ちがある。
それと共に挨拶をと動こうと思えば、ヒル魔とムサシの壁がそれを阻む。
その壁が崩れないことを疑問に思い、ボードに手を掛けた。
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