アイシールド21夢

□名前
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棗は昼休みに部室の整理をしていて、冷却スプレーやテーピングが残り少ないことに気が付いた。
いつもであればまもりが補充しているのだが、数日の間部活を休むと言っていた彼女に非は無い。
むしろ気づかなかった自分が悪いと棗は反省し、ヒル魔のいる教室を訪ねた。
廊下に来たところでヒル魔を呼び出してもらおうかと思ったが、先に周囲の人間に名前を呼ばれてヒル魔の方が気が付いてきた。


「オウ、どうした糞小動物」


ヒル魔はいつも通り無糖ガムを噛みながら棗の前に現れた。
機嫌が良さそうなヒル魔を見て、棗は少し申し訳なくなりながらボードを差し出す。


<すみません、ヒル魔さん。確認したら冷却スプレーとかテーピングが残り少なくて…。多分今日の分も足りないと思うんです>


本当に申し訳なさそうな顔をした棗をみて、ヒル魔は心を読むまでもないな、と小さく苦笑する。
足りないものは細々したモノだが、無ければ部員たちが困るだろうし部活に支障があるかもしれない。そう棗が思っていることは間違いない。
こんな小さな失敗に心底反省をする素直さが棗の良さだ、とヒル魔は一人ごちる。
だが今日はいつもいるまもりが家の都合で部活に出られない。
かといって部員を買いに行かせるわけには行かない。
ならばヒル魔が奴隷と呼ぶその他大勢に行かせればいいのだが…。
ヒル魔は小さくため息を吐いて、口を開いた。


「お前、昼休みにドリンクだのタオルだのの用意はしたんだな?」

「(こくり)」

「なら部活前に買いに行ってこい」


その一言に棗は瞳を輝かせた。
何度か買い出しに行く機会はあったのだが、毎回まもりがその役目を仰せつかっていたのだ。
ヒル魔もまもりも他のメンバーたちも棗の買い出しに頷いてくれる人はいなかった。
そろそろ道も覚えてきたんだよ、とセナや十文字たちに相談しても彼らは首を振るばかり。
だがやっとそのチャンスがやってきたのだ。


「(こくんっ!)」


棗の嬉しそうな笑顔を見て危なっかしさを感じたヒル魔は少し早まったかと思いながらも、その場で買い出しリストを制作し部費と一緒に手渡した。
棗はそのリストと封筒を大事に胸に抱き、教室に戻っていった。


***
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