アイシールド21夢

□消えた文字
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棗が西部高校の近くに紅茶専門店があることを知ったのは偶然だった。

たまたま受け取ったフリーペーパーには、ある通りの写真が載っていた。
暇つぶしにそれをみていると写真の端に"紅茶"の看板を見つけ、棗は早速出掛けることにした。
地図は簡略化されていたが、目印として西部高校の文字が躍っている。
それを見かけて棗は小さく笑って、キッドさんや陸君も知ってるかな、と思った。
メールしてみようかな、とも考えたが信号が青になったせいでそれは中断された。

通りはざわついていたが並んだ店構えのおかげか重厚な雰囲気だった。
写真が撮られた位置に立つと、写真と同じ場所に看板を見つける。
ドアを開けると、喫茶店のようにドアベルが鳴って棗を歓迎する。
店内は少し照明が暗めだったが落ち着いた雰囲気で居心地が良い。
奥にはこぢんまりとした喫茶店スペースもあり、隠れ家のようで棗の心をくすぐった。


「おや、いらっしゃい」


店主だろうその人は70手前くらいのおじいさんで、その店の雰囲気そのままのような人だった。
優しく迎え入れてくれる笑顔に嬉しくなって、棗も笑顔を返す。
店主が背を向けた棚にはたくさんのラベルの貼られた缶が並んでいる。


「紅茶をお探しかな?好みの茶葉か、味はあるかね?」


ミルクティーが好きな棗はアッサムやウヴァを好んで買っているが、味をきかれるとは思わなかったらしい。
棗は少し気になって、最近はまっているオレンジピールチョコレートと合う茶葉を聞いてみた。
すると店主はボードに書いた棗を少し不思議そうに見た後、笑って2種類ほど勧めてくれた。
棗は説明を聞きながら何度も何度も細かく頷く。
その素直さに店主が表情を緩めた時、ドアベルが鳴った。
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